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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
234/309

次の試合はっと

「さすがは瞬一だね!」

「見事な戦いだったわよ、瞬一先輩」


帰ってきたのと同時に、俺は観客席にいた葵と刹那に声をかけられる。

……啓介がいないということは、アイツは試合に向かったということだろうか。


「ああ、佐々木先輩なら、さっきコールがあって下に行ったわよ」

「そうか……ん?そこで負のオーラを発してるのは誰だ?」


何だかあからさまに黒いカーテンがかかっている人物が、晴信の隣に座っていた。

……誰だろう、コイツは?


「コイツは小野田だよ。負けたショックがよっぽど大きかったんだろうな」

「……そうか。小野田、負けたのか」

「ああ。しかも、勝てそうだっただけに、余計にショックが大きかったらしい。話しかけても何の反応も返って来ない」

「……そっとしといてあげた方がいいですよ。こういう場合は」


春香の言うとおりだ。

無理に変なことを言うだけ、今の小野田にとっては逆効果となってしまうだろ。

……何より、面倒臭い。


「ただいま……」

「お?啓介も帰ってきたのか……で、試合の方はどうだった?」


そこに、多少疲れた様子の啓介が帰ってくる。

啓介は、心底疲れたような声で、こう言った。


「試合は負けた……アイツ、相当強かった……」

「そんなに強かったのか?」

「ああ……攻撃が当たらなかった。風魔術を使ってくる奴だったけど、かなり動きが早くて……」


息も絶え絶えに、啓介は答える。

と、そこに聞き覚えのある声を聞いた。


「ご苦労様、啓介」

「!!その声は……千里!?」

「え?小山先輩?」


俺達の席から少し後ろの方から、見知った人物が降りてくる。

大和撫子を連想させるその人は、小山先輩その人であった。


「小山先輩……居たのならこっちに来ればよかったじゃないですかぁ」


気持ち悪い敬語を使って、晴信が言う。

……コイツ、まだ小山先輩のことを諦めてなかったというわけか。


「……瞬一先輩、この人は誰なのよ?」


その様子が納得いかなかったのか。

刹那が若干怒り気味に俺に尋ねてきた。

いやぁ、青春って、いいよね!


「この人は、啓介の昔からの幼馴染の、小山千里先輩だ。今後何かと接点があるかもしれないから、今のうちに覚えといた方がいいぞ」

「え、ええ……そうするわ(……負けない)」


最後に刹那がボソッと『負けない』と呟いていた気もするが、多分小山先輩自身は、晴信のことなんてそんな目では見ていないだろう。

俺の予想が正しければ……。


「あと少しあの魔術の使用タイミングが早ければ、きっと啓介も勝てただろうにね」

「そうなんだよな……あと少しで……」


啓介と話をしている時の小山先輩は、心から笑えているような気がする。

つまりは、小山先輩の心は、啓介に傾きつつあるということだ。

……こんな出っ歯のどこに魅力を感じたのかはともかく。


『第三スペース、雷山塚高等学校:宮澤晴信、郡山高等学校:稲垣飛鳥の試合が入ります』

「お?俺の名前が呼ばれたようだな」


いつの間にか、晴信の名前が呼ばれていたようだ。

……晴信なら、初戦突破は間違いないだろうな。

個人戦は、俺含め残り二人となってしまったからな。

出来れば晴信には、ここで勝ってほしい。


「分かってるよ。絶対勝ってくるっての!」

「……晴信先輩、怪我はしないようにしなさいよね」

「……ああ、分かったよ」


顔を赤くして、そっぽを向いてそう言った刹那に、晴信は笑顔でそう返す。

……直視はしてなかったのだろうが、刹那の顔はさらに赤くなっていた。

……うん、刹那は今、青春しているなぁ。













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