初戦は大事だよな
一回戦目に俺と小野田の二人が位置づけられている。
……最も、俺と小野田は戦う場所が違う為、互いが戦っている様子が見えるわけでもない。
だから、特に俺は小野田の試合経過とかを気にすることなく、自分の試合に集中することにした。
「さて、俺の試合相手はっと……」
「お前が俺様の試合相手か?」
後ろから声をかけられる。
するとそこには、不良っぽい男子生徒が一名居た。
「ああ、そうだけど?」
「よかったぁ~俺様の対戦相手で。何だか弱そうだもんなぁ」
……その言葉、そっくりお返ししてやるよ。
確か名前は、堂島健吾だっけか?
「さて……話しすぎるのも試合進行上よくないからな。さっさと始めようぜ!」
「いいけどよ……俺に当たったことを後悔するんじゃねえぞ?」
「言ってろ!時機に俺様が勝ちを得るんだからな!!」
その言葉が合図となって、俺達は同時に走り出す。
そして、何故か殴り合いになっていた。
「……はい?」
「俺様の戦闘スタイルは、魔術による体強化を施した状態での格闘戦だからな。こんな戦い方になるのも当然ってわけだ」
なるほど……さすがは全国大会。
面白い戦い方をする奴もいるものだな。
だが、近距離戦で俺に挑もうなんて、あまりに無茶過ぎるぜ!
「そんな戦い方をしたことを後悔するんだな!……聖なる雷よ、我の右手にその力の一部を宿せ!」
お馴染みのライトニングの呪文を詠唱し、そして相手に向かって雷を放出する。
だが、堂島はそれを殴って打ち消す。
「……ほぉ。そう言う戦い方なのか」
「飛び道具なんぞ俺には効かないぜ?……今度はこっちの反撃だ!」
ドン!
地面を思い切り蹴り、俺にどんどん近付いてくる堂島。
……一応この程度だと、小野田よりは強いくらいかな。
けど、俺の相手としては不十分だ!!
「雷を纏いし我が剣よ。その姿を現し、我が武器となれ!」
「な、何!?武器を出してくるだと!?」
何心底驚いた表情見せてんだよ、堂島の奴は。
別に武器使っちゃいけないなんてどこにも書いてないだろうが。
「峰で勘弁してやるよ……おとなしく地面に伏せろってんだ」
「言うじゃねえか……喧嘩じゃ負け知らずの俺様に、はたして勝てるかな?」
そのセリフは、間違いなく死亡フラグだと思う。
……小野田ですら言わないぞ、そんなセリフ。
「お前に一つ言っておく……俺はここまで負け知らずだ。そんな俺相手に、はたしてお前はどこまで戦うことが出来るかな?」
……言っていた。
「よそ見してる暇はあんのかよ!」
「あらよっと!」
堂島の右足蹴りを、俺は難なくかわす。
そして、峰で腹を思い切り殴る!
「ぐはっ!」
堂島の動きは鈍る。
よし、後はこのまま……。
「炎よ。我が身を喰らいて彼の者を包み込め!」
俺にしては珍しく、炎属性の魔術を発動させる。
……別に得意属性が雷というだけで、それ以外の属性も使えるのだ。
「あっち!!」
魔術服を着ている為、体が焼けることはない。
けれど、堂島を包み込む炎の渦のおかげに、堂島自身はかなりのダメージを受けたようだ。
おさまったころには、
「もう……だめ……ガクッ」
「堂島健吾、戦闘不能。三矢谷瞬一、勝利!」
堂島は、そう言葉を言い残すと、その場で気絶してしまった。
同時に、審判からの言葉も聞こえてきた。
……堂島健吾の連勝記録は、俺の手によってあっさりと打ち砕かれたのだった。
まぁ、なにがともあれ、これで一回戦は突破したことになるな。
次の俺の出番は、結構先の話しになりそうだ。
「……くそっ、覚えてやがれ」
……気絶した筈なのに、まだ堂島は喋れたんだ。




