全国高校対抗魔術格闘大会
「結構広い場所なんだなぁ、ここ」
「そうだな……軽く何百人かは収容できる程のスペースがあるだけに、戦闘スペースも広い」
「全国からたくさんの強い人が集まる大会、か……」
「ドキドキします」
俺達は今、東京都を代表する闘技場に来ている。
理由はただ一つ。
部活創設以来、始めての公式戦となる―――『全国高校対抗魔術格闘大会』に出場する為だ。
この大会は、五人まとめて一組となる団体戦と、一人一人が独立して戦う個人戦の二つに分かれる。
後は、順々に勝って優勝を目指せというものだ。
「んで、団体戦のメンバーは女子で埋め尽くされた、と」
団体戦は、女子の部にしか参加しない。
なぜなら、女子だけでメンバーを組めば、ちょうど五人になるからだ。
一応この部活のメンバーを並べるならば、俺・晴信・啓介・小野田・葵・春香・織・優奈・刹那の合計九人。
うち、男は四人しかいないので、団体戦には出場不可というわけだ。
「つーわけで、俺達男子は個人戦で何とか勝ちあがっていくぞ」
「「「おう!!!」」」
やる気だけは十分のようだな。
けど、やる気だけでこの大会は乗り越えられない……まぁそんなことは最初から分かってるけどな。
「開会式も開かれたし、そろそろ試合が始まるわけですよね?」
「ああ、その通りだな」
春香が俺に尋ねてきたので、俺は質問に答える。
……いよいよ試合が始まるのか。
何だか少し、緊張してきたぜ。
「まずは個人戦から始まるんだよな?」
「そうだよ。個人戦がある程度終わった所で、団体戦に行くって形だよ」
葵が晴信にそう答えた。
その時だった。
『さぁ皆さんお待たせ致しました!いよいよ今大会の第一試合を発表したいと思います!』
「あ、アナウンスだ!」
「ということは、いよいよ試合が……」
啓介がアナウンスの言葉に気づき、そう叫ぶ。
言われなくても分かってるっちゅーの。
『ではその前に、会場に区切りをつけたいと思います……どうぞ!』
「区切り?」
何のことだろうと呟きかけたその時だった。
突如地鳴りがして、地面から謎の仕切り見たいのが現れる。
それらは、広かった戦闘スペースを、見事に何分割かにわけたのであった。
「なるほど……初戦だからあのくらいのスペースで戦えっていうのか」
「そうみたいだな……それでも少し広いくらいだろうけど」
二人で戦うにはちょうどいいか、むしろ少しだけ広いくらいのスペースが設けられる。
……まぁあんなに広い戦闘スペースを、二人だけで使いきるのも正直どうかと思ってたところだし、このくらいが妥当なんだろうけど。
『それでは発表します!第一スペースの第一試合は……』
いよいよ試合の組み合わせが発表される。
俺達は、第一試合に出場することになるのか。
なったとしたら、どこのスペースで戦うことになるのか……?
『……第八スペース第一試合、雷山塚高等学校:小野田光平vs桜橋高等学校:虻川優斗』
「お?小野田の名前が呼ばれたみたいだぞ?」
「よっしゃあ!軽く初戦を突破して見せるぜ!!」
「……初戦敗退の間違いじゃないのかしら?」
「何を言ってるんだ、後輩のくせに!!」
「落ち着け、小野田。いつものことだろ」
刹那の言葉を聞いて頭に血が昇った小野田に対して、俺はなだめる。
……正直、俺も刹那が言った通りの結末を迎えるなと考えていたが。
『第十スペース第一試合、雷山塚高等学校:三矢谷瞬一vs六宝山学園:堂島健吾……以上が第一試合です!』
「何だ、ギリギリ俺の名前が呼ばれるとはな……」
「頑張ってね!瞬一!」
「応援してますね、瞬一君」
「ファイトだよ!瞬一君♪』
「え、えっと……頑張ってください、瞬一先輩」
「まっ、瞬一先輩なら、初戦なんて楽勝よね?」
女子からの応援の言葉を受ける俺。
……ふと気になって横を見ると、落ち込んでいる小野田の姿があった。
「……人望の差だ、小野田」
「納得いかねぇええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
小野田光平、天に向かって叫ぶ。




