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Magicians Circle  作者: ransu521
文化祭編
230/309

ランカスト家の憂鬱 ~後編~

「私と共に、国を捨てて、共に暮らさないか?」


確かめるように、エーネルは言います。

けれど、エルマーは少し動揺してしまいます。

なぜなら、国を捨てるということは……二度とこの国には戻ってこないことを指すからです。

すなわち、家族を捨てるということになるからです。


「た、大変嬉しい提案なのですが……その提案は……」

「頼む、お願いだ!このままだと、私達の軍はランカスト家を制圧してしまうだろう。そうすれば、エルマーの命も無事ではなくなるかもしれない!……出来れば、エルマーの家族の命も助けてやりたいが、私一人の力では、エルマー一人で手いっぱいだ……だから、救える命だけは、私の手で助けたいのだ!」

「エーネル様……」

「それに……私も国を出る」

「!!」


エーネルが国を出るのには、かなり重大な意味が備わっていることを、エルマーは知っていました。

なぜなら、彼は次期国王候補。

すなわち、国を出てしまえばその地位はなくなってしまい、なおかつ二度と自分の国に帰れないのです。


「お金に困ることもあろう。食べ物に困ることもあろう。生活が不便になってしまうだろう……だが、私はそれでも構わない。エルマーさえいれば、私はどうなろうと関係ない……エルマー、私と共について来てはくれぬか?」

「わ、私は……」


戸惑うエルマー。

エルマー自身も、エーネルのことを想ってはいます。

けれど、それと同様に、家族のことも大切に想っているのです。


「私は、エルマーさえいれば、他に何もいらない。エルマーの為なら命だって投げだせる。エルマーの為なら、家なんかどうでもいい!……私はそれほどまでに、そなたを愛しているのだから―――!!」

「!!」


エーネルは、エルマーにそう言い放ちました。

すると、エルマーの心が、一気に揺らぎました。

そして……。


「……私も、エーネル様のことを愛しています。私も、エーネル様の行く所なら、どこまでもついて行きたいと思います―――!!」

「それじゃあ……」

「はい。私も……貴方のお供をさせてください。それこそが、私が望んでいた願いなのですから」


そしてエルマーは、エーネルの体に寄り添うように抱きついてきた。

エーネルは、優しくその体を包み込み、


「「……」」


その後で、口づけを交わしました。


「……それでは、今のうちにこの城から出ることにしよう!」

「そうですね……いつさっきのような事態に陥るとも分かりませんし。行きましょう!」


エーネルとエルマーは、兵士達の間を掻い潜って、どんどん城の外へ出ていきます。

そして、裏口から脱出し、そこで待たせていた馬に乗り、二人はついに、ランカスト家から脱出したのでした。












その後、彼ら二人の姿を見た人は誰もいません。

ですが、エーネルとエルマーは、どこか辺境の地で、幸せに暮らしていることでしょう。

この物語は、このような結末で、終わりを迎えます。












パチパチパチパチ!

会場から拍手の音が鳴り響く。

……どうやら俺達の劇は、それなりに受けたようだな。


「お疲れ様、瞬一・織」

「ふぅ~……さすがにセリフが多くて疲れたぜ」

「ぼ、ボクもだよ……」


舞台裏に来た俺達に、大和がそう声をかける。

確かに、俺と織のセリフは多すぎた。

……それこそ、恥ずかしいくらいに。


「最後のキス、あれってフリなんだよね?」

「あ?ああ……そうだけど?」

「……フリで終わったのが、残念だったなぁ」


葵に聞かれて、俺はそう答える。

何故かその後ろでは、織がショックを受けていたが。


『それでは、結果発表です!』

「おっと、大賞の発表か?」

「最後ですからね……私達のクラスが」


そして、司会者の口から、ステージ発表のクラス大賞が発表される。

俺達のクラスの結果は―――!!













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