割と早い……
「せいっ!」
「はぁっ!」
ガキン!
互いの得物は同じ。
刀と刀がぶつかり合う。
……力は強いな。
「……この野郎!」
「力任せに振ったところで当たるものでもありませんよ?」
別に力任せに振っているわけでもないのだけど。
まぁ、ちょっと力は込めてるけどな、いつもよりは。
「……ふん!」
ガン!
刀と刀が奏でる音は、不規則のようで規則的なものであった。
その場所に行けば、俺はその場所に刀を置く。
相手の攻撃を読み、そこに刀を振る―――!!
「ま、まさか……貴方」
「まぁ、多分お前よりは戦闘経験あるんじゃねぇの?」
「……偽りの風よ。我に力を貸せ!!」
風魔術の詠唱か……。
魔術を使ってきた所を見た所、そろそろ魔術使ってもいいってことだよな?
「聖なる雷よ。我の右手にその力の一部を宿せ!」
右手を前に突き出す。
地面には、黄色の魔法陣が描かれて、そこから俺の右手に力が宿る。
そして、宿された力を、俺は……。
「喰らえ!ライトニング!!」
春山に向けて一気に放出した。
だが。
「喰らいませんよ!」
「……おお」
一瞬にして、春山はそこから姿を消す。
なる程……さっきの魔術は、体強化の魔術だったというわけか。
「風を喰らえ!!」
今度は春山のターン。
右手に風の塊を作り、勢いよく俺に投げてきた。
俺はそれを右に避け、難無くやりすごす。
だが、強い風が地面に衝突した所で、その風は吹き荒れる。
ダメージこそ喰らわなかったが、それは辺りに砂嵐を起こさせるには充分だった。
「ちっ……前が見えない」
「終わりです!」
「!!」
ちぃっ!
こんな中でも春山は攻撃できるって言うのか!!
「はぁっ!」
この場合、敵がどの方向から攻めてくるのがよいかを考えよう。
相手の視界を封じ、不意をつく攻撃をするのだとしたら……。
「後ろだ!!」
振り向きざまに、俺は刀を振る。
すると、ガキン!という衝突音が鳴り響いた。
本来ならば、ただ刀を振っただけだと聞こえることのない音。
つまり、敵はやはり後ろから来ていたということだ。
「な、何故この攻撃を……」
「予測したんだよ。こういう場合の敵の動きをな」
「な、何ですって!」
「驚いてる暇あったら、避けるくらいの動きは見せろってんだよ!」
ドゴッ!
鳩尾に思い切り力を込めた拳をぶつける。
春山は、一気に力を失う。
そこを、俺が見逃すはずがなかった。
「……せいっ!」
「!?」
喉元に突きつけられる、俺の刀の刃。
これを振り切ってしまえば、春山の命はない。
だが、これはあくまで模擬戦闘だ。
命を奪うという行為にまでは至らない。
つまりは……。
「……僕の、負けです」
『決まったぁああああああああああああ!勝者は、我が校の魔術格闘部所属、三矢谷瞬一選手だ!!』
「「「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」
……なんだか照れるな、こんだけ人が多いと。
それに、割と早く決着がついた気もしなくもないな。
「……僕の完全なる敗北です。悔しいですが、貴方は相手として悪すぎました」
「そうか……なら、これから強くなればいいだろう」
「……それもそうですね」
そして俺と春山は、しっかりと手を握った。
まぁ、スポーツマンシップという奴だろう。
こうして、魔術格闘部の、文化祭の出し物は終わった。




