やりがい
織をなだめた後、俺は春香と葵の二人もなだめることに成功した俺は、ただいまケーキ屋でバリバリに働いている。
注文を取ったり、ケーキを運んできたりと、割と忙しい。
客の出入りも、女性客に人気らしく、そこそこ入ってきている。
俺達としては、味目当てで来る女性客にとても感謝しつつ、たまにやってくるウエイトレス目当ての男性客に目を血走らせながらも、本日の仕事をこなしていた。
そして、
「いらっしゃいませ……っと、来てくれたのか、アイミー・シュライナー」
「はい。来てしまいました」
「お嬢様がどうしても寄りたいとおっしゃったものですから」
たくさんこの学校を回った様子のシュライナーとアイミーの姿があった。
一見大変そうに見えたが、シュライナーもアイミーとの二人きりで校内を回れたというだけあって、まんざらでもない様子だった。
むしろ、嬉しそうにも見える。
「それでは……二名様ですね?こちらのお席へどうぞ」
店員スマイルを浮かべて、俺は二人をテーブル席へと案内する。
そして、俺は二人から注文を取る。
「ご注文がお決まりになりましたら、私達をお呼びください」
「あ、じゃあ……いいですか?」
「え?早いなぁ……おっと、それでは承ります」
おっと、あまりの早さについ本音が出てしまった。
一応友人の前だとしても、俺は店員なのだから。
客の前では敬語を忘れずに、だよな。
……敬語は少しむず痒いんだけど、劇の役作りも兼ねてるから仕方ない。
「ショートケーキを二つと、コーヒーを二つください」
「畏まりました。少々お待ちください」
俺は厨房(料理スペース)に戻ると、
「ショートケーキ二つと、コーヒー二つ入ったぞ!」
「うん、分かった!」
「はい!」
厨房で料理をしている葵と春香の二人にそう声をかける。
……料理のうまいこの二人と、他数名の女子に料理の方は任せてあるので、安心なのだ。
まぁ、北条は今頃、明日行われるステージ発表の下見でもしてる最中だと思われる。
大和がいないから、しょぼんとしてるだろうなぁ。
「出来ました!」
「早いな……それじゃあ持っていくか」
さっきの俺との会話のおかげで俄然やる気が出たらしい二人は、凄い早さで注文された料理を完成させていく。
……元から料理がうまい二人をやる気出させると、ここまで凄くなるのか。
お盆の上に、完成した料理を乗せてっと……。
「お待たせいたしました。ショートケーキ二つと、コーヒー二つです。ごゆっくりどうぞ」
俺はそれだけを言うと、他の人の注文を聞きに行く。
……いい感じに忙しいな。
想像してたよりも、売上は高いんじゃないだろうか?
「あ、おいしいです……」
「本当ですね……お嬢様」
ケーキを食べている二人は、笑顔になっていた。
……何と言うか、お似合いの二人(?)という感じがしなくもない。
まぁ、主従関係というよりも、友人関係である二人だからそう見えてもおかしくはないんだけどな……シュライナー自身はあまり自覚してないだろうけど。
「さて。俺も張りきって仕事やりますか!」
お客さんが料理を食べておいしいと言ってくれる。
笑顔になってくれているだけで、俺達はとても嬉しくなる。
そんなわけで、残り後数時間。
張り切って頑張りますか!
こうして、文化祭一日目は、無事に終了したのであった。




