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Magicians Circle  作者: ransu521
文化祭編
221/309

惨劇を回避せよ(鬼治し編)

さて、昼飯を食べ終えたということで、シフトが入れ替わる時間となった。

もう少しアイミーと回っていたかったが、流石に自分のクラスの仕事をサボるわけにもいかないからな。

こうして俺の自由時間は、終わった。

けど、アイミーはどうすればいいのだろうか。


「私なら平気ですよ。シュライナーが待っていますから」


そうか……シュライナーがいたか。

なら平気だな。


「ま、後でこっちにも顔を出してくれればいいさ。食後のデザートとしてケーキを用意して待ってるぜ」

「はい!」


笑顔で俺の言葉に答えると、アイミーはそのまま何処かへ歩いて行った。

さて、俺はすぐに準備をしないとな。


「ただいま」

「……おかえり、瞬一君」


帰ってきてみたら、鬼のような形相を浮かべている織が、俺のことを待ち受けていた。

ま、まずい……かなり怒ってるぞ。


「い、今帰ってきたぞ」

「待ってたよ、瞬一君……?」


駄目だ……全く回避出来る要素がない。

死亡フラグしか立っていないぞ。


「さっきのは……どういうことだったのかなぁ?」


いつの間にか、場所は教室の奥の方のスタッフルームに移動しているため、周りに助けはいない。

ここには、織と俺の二人きりということだ。

言葉の選択を間違えただけで……死ぬ。


「そ、それはだな……校長にも頼まれてたんだよ」

「二人きりで……?」

「そ、それは……」


確かに、校長との交渉の際に、『二人きりで』という条件はなかった。

けれど、だからと言ってこの状況の織を連れていくのも少しつらいだろう。

もちろん、それは葵とて例外ではなかった。

……道中で殺される可能性も否定出来なかったのである。


「……遺言は、ある?」

「待て待て待て待て!どうして弁解の一つもさせてくれないんだよ!!」


まったく、織はここ数年の内に、人の話は最後まで聞くということを忘れてしまったのだろうか?


「弁解の場を用意する必要はないよね?だって瞬一君は、ボクより王女様を選んだってだけの話だしね」

「そういうわけじゃないんだけどな……」


参ったな。

こりゃひょっとしたら、命取られるかもしれないぞ。

腹をくくるしかないのか……!?


「そんなに二人きりで出掛けたかったのなら、今度何処かに連れてってやるから!!」

「!!」


……あ、あれ?

急に大人しくなったな。


「……分かった。それで許してあげる」


どうやら交渉は成立したようだった。

ふぅ……危なかったぜ。


「けどその代わり……その日はボクの言うことは何でも聞いてよね!」

「はいはい。それで今回のことを許してもらえるのなら、喜んで引き受けるよ」


すでに織からは怒りのオーラは見当たらない。

つまり、もう怒ってはいないということだ。


「それじゃあ……楽しみに待ってるからね。その日が来るのを!」


笑顔で俺にそう言うと、織はスタッフルームから出ていった。


「……ふぅ」


とりあえずはこれで惨劇だけは回避することが出来た。

後は店の売り上げ上昇の為にたくさん働くまでだ。


「さてと……張り切って働くか」


俺は制服から接客用のスーツに着替える。

うちの店はファミレス風という設定なので、男子はスーツ、女子はウエイトレスの格好をしているのだ。


「蝶ネクタイをしめて……完璧」


さて、そろそろ仕事に取りかかりますか。

と、意気込んでスタッフルームを出ようとしたその時だった。


「……瞬一、さっきの織ちゃんとの話はどういうことかな?」

「詳しく……教えて欲しいです」

「……」


どうやら惨劇は、まだ続いている様子だった。
















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