昼食
……こんな調子でこの学校の文化祭を満喫する所、およそ一時間強。
俺達はさすがに腹が減ってきた為に、後、俺の方の時間もなくなってきた為に、そろそろ昼食を食べることにした。
どこで食べるか迷った挙句……中学二年生の教室で、なにやら喫茶店みたいなことをしているという話を聞いたので、そこの教室へ向かうことにした。
この教室には、確か空がいたような気もするし……。
ガラッ。
今回はあまり戸惑うことなく、俺達は扉を開いた。
すると、
「いらっしゃいませお客様。何名ですか?」
「二名で」
「かしこまりました。それでは、ご案内いたします」
制服で接する女子生徒に案内されて、俺達はテーブルにつく。
さっきの2-A程ではないが、この店もそこそこ人入りがいいようだ。
「これがメニューですね……」
「さてさて、どんな料理があるのだろうか……と」
俺とアイミーは、テーブルの上に置かれていたメニューを見て、どんなものがあるのかを確認する。
まず最初に目についたのは……。
「ピラフとか、チャーハンですか?」
「……割と本格的なんだな。教室でチャーハンとかやるとは」
中学生にしてはなかなかの名案だと俺は思う。
他には……。
「ほぅほぅ。シチューとかカレーもあるのか……」
「結構メニューが多いんですね」
「だな」
この店に来て良かったと思う。
と言うか、どうやってこれらの料理を作るというのだろうか?
……まぁ、この教室のいいところを巧みに利用しているのもあるがな。
その利点とは……。
「いらっしゃいませ……って、瞬一さんじゃないですか。来てくれてありがとうございます♪」
「まぁな。昼時だったし、ちょうどいいと思ってよ……あ、注文言ってもいいか?」
「はい。構いませんよ?」
よし、それじゃあ注文を……。
「ピラフを一つと、シチューを一つ、後紅茶を二つください」
「畏まりました。少々お待ちください」
そう告げると、空はパタパタと足音を立てて、奥に戻る。
……うん、一生懸命頑張ってるな。
「今のも、シュンイチの知り合いですか?」
「ああ。葵の妹だ」
「アオイの……なるほど、通りで少し似ていると思ったら、そういうことだったのですか」
やはり気づいていたみたいだな。
さすがはアイミー、人を見る目はあるな。
「お待たせしました」
「お?意外と速いな」
「ええ。隣の家庭科室で料理をしていますので」
そう。
この教室の最大の利点は、隣が家庭科室であるということだ。
他のクラスも借りてはいるが、このクラスは隣接している為、すぐに持って来れるというわけだ。
ちなみに、うちのクラスも借りてはいるが、ケーキ屋だからそこまで影響はないと言えばない。
何せ、ケーキなら教室でもギリギリ作れるし。
「それでは、ごゆっくりどうぞ……後、ピラフを頼んでくれて、ありがとうございます」
そう空は告げると、顔を少し赤くして、戻って行った。
……最後の言葉の意味って、もしかして。
「これ、空の手作りピラフってことか?」
「多分そうでしょうね……私もシュンイチの為に何か料理を作らなければ」
最後の方にアイミーが何を言ったのかいまいち聞こえなかったが、まぁとりあえず俺達は料理を堪能することにした。
いい匂いだ……嗅ぐだけで食欲が湧いてくる。
「ふむ……おお!」
「お、おいしいです!」
ご飯がちょうどいい具合にパラパラとしていて、具材本来の味がぎっしり詰みこまれている。
味と栄養が考え込まれた、なかなかありつくことの出来ない料理だろう。
「……このシチュー、作り方を教えてほしいくらいです」
「何だ?そんなにおいしいのか?俺にも食べさせてくれよ」
「あ……」
俺は、置かれたスプーンを使って、シチューの味見をしてみる。
……お、これはなかなか美味い。
「……///」
「どうした?アイミー。顔を赤くして」
「な、何でもないです!」
……何だか微妙な空気になったような気がする。
なんというか、その……恥ずかしいような空気に。
その後、俺達は沈黙状態のまま、昼食を食べることとなった。




