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Magicians Circle  作者: ransu521
文化祭編
219/309

すべて近き理想郷

続いて俺達が訪れたのは、2-Aだ。

一応晴信達の教室にも遊びに行ってみないと……後が怖いからな。

最も、昨日の反応を見る限り、アイミーを連れてくるのは間違った選択のようにも思えるが。


「どうしたんですか?」

「……いや、まぁ、店の名前に驚いてただけだ」


その名も……『すべて近き理想郷アガルタ』。

……どこぞの作品を二つもパクッて完成させた、なんとも斬新な店名だ。

このタイトルをつけたのは、間違いなく晴信だろうな。


「さて……ものすごく入りにくいこのお店に、入ってみるとするか」

「?そうですね」


恐らくアイミーは、この店の名前の由来等は知らないだろうな。

けれど……分かる俺も、何だかものすごく嫌悪感を抱かずにはいられない。


「……入るぞ」

「は、はい」


何だか妙な緊張感が俺を襲ってくる。

扉を開けようとすると……その……プレッシャーが。

ええい、ままよ!

ガラッ!


「おかえりなさいませ!ご主人様、お嬢様!!」

「「……はい?」」


さ、さすがは晴信プロデュース。

2-Aという神聖なる教室が、見事にカオスでピンクな空間に様変わりしてみせたよ。

アイツ……やはり放っておくと、誰にも止められないタイプなんだな。

このメイド服だって……実は計算づくされているものみたいだし。

……何だか、笑顔を振りまくこの子がかわいそうに見えてきた。


「二名様ですね?こちらの席へどうぞ!」

「は、はい……」


戸惑うアイミー。

そりゃそうだろ……こんなのを見せつけられたら、誰しも動揺を隠さずにはいられない。

しかも、店の中にいるのが、ヤバそうな感じの男ばっかししかいないものな……。

女子なんて、両手で数えられる程しかいない。

……晴信の奴め、自分の趣味の為にクラスメイト全員を巻き込むとは……やるな。


「あ、シュライナーみたいな人もいますね」

「ん?……本当だ」


辺りを見回すと、メイドだけでなく執事もいるようだ。

……なるほど、これで女性客も呼ぶという魂胆なのだろうが……。


「……啓介、アイツは何をしてるんだ?」


そして、啓介が謎の格好をしているのが見えた。

あれは……ピエロ?

そして……サーカスでよく見るような玉乗りをしているのが目に見える。


「皆さん、この佐々木啓介に盛大なる拍手を!!」


そう叫ぶのは、晴信だ。

……アイツら、この喫茶店の雰囲気ぶち壊しにしてないか?

こんな芸が受けるわけ……。


「では今から、玉乗りした状態でももあげをさせたいと思います!!」


……は!?

ももあげだと!?……アイツ、そんなこと出来るわけないのに……。

ドッドッドッドッドッドッドッドッ……。


「……出来てやがる」

「あ、ある意味凄いです……」


あほらしい芸だが、しかしそれはすごい芸だった。

普通、あんなことは出来やしないだろう……さすがは啓介。

男に不可能という文字はない、とでも言いたいのだろうか?


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、ああ。俺はコーヒーを」

「私は紅茶をお願いできますか?」

「畏まりました、ご主人様、お嬢様」


そう笑顔で告げると、そのメイドの女の子は、さっさと奥へ引っ込んでしまった。

……何だかかなりカオスな空気だ。












しかし、コーヒーはおいしかったし、アイミーに聞いた所、紅茶も美味しかったらしい。

けど、啓介のあの芸には、一体何の意味があったのだろうか……?













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