占いの館
そんなわけで、俺達はまず、1-Aの教室に来ていた。
ここでは……占いの館的なことをやっていた。
よかった……もし俺達が占いをやることになっていたら、ここと被ってしまうところだった。
「さて……中に入ってみるとしようぜ」
「はい。占いには少し興味がありますし」
よかった……アイミーが占いに興味がなかったら、来るのが無駄になるところだったぜ。
こっちまで来てよかった……。
まぁ、前振りはともかくとして、とにかく俺達は中に入ることにした。
ガラッ。
「ようこそ。我がクラスの占いの館へ……って、瞬一先輩ですか!?」
そう言ってきたのは、何やら黒いトンガリ帽子を被っていて、黒いマントを身に纏っている、優奈の姿があった。
多分、魔女をイメージしたコスチュームなんだろう。
しかし、なんとも可愛らしい魔女だこと……。
「シュンイチの後輩ですか?」
「ああ。部活の後輩の優奈だ」
「あ、よろしくお願いします……もしかして、グレイブスタン公国の王女様ですか?」
気になったのか、優奈がそう尋ねてくる。
そりゃあ気になるよな……俺だって逆の立場なら思わず目を疑いたくなるもの。
「その通りだ。アイミー……いや、アイミーン・グレイブスタンだ」
「ええ!?」
偉く驚かれた。
……まぁ、多少無理はないとは思うけど、何もそこまで驚かなくてもいいだろうに。
「と、とにかくこちらの席へどうぞ……」
「あ、ああ」
とりあえず俺達は、アイミーと一緒にイスにつく。
……なんだか妙に緊張してきた。
「いらっしゃいませ、瞬一先輩」
「占うのはお前か、刹那……」
一気に知り合い二人に会えるとはな。
どっちかと会えればいいと思っていただけに、これは少し驚きだった。
「何か不満でもある?」
「いや、特に不満はないが……お前こそ何か不満でもあるか?」
「何をよ」
「いやぁ、晴信と一緒に来なかったこと……とかか?」
「なっ……!!」
やはり、少し動揺して見せている。
……本人は気づいていないが、間違いなく刹那は……。
「あの、どういうことなんでしょう?」
「ああ、アイミーは知らなくても別に問題ないことだ。他人のピンク話には、耳を傾けるものじゃないだろ」
「ぴ、ピンク話っていう表現もどうかと思いますけど……」
頼む、そこには突っ込まないでくれ。
「それでは占いうわ……まずはあなた達の恋愛運からね」
ちょっと待て。
いきなりクライマックスに突入してる気がするんだが。
そんな俺の思考を無視して、刹那は水晶玉に両手をかざすような動きを見せる。
「瞬一先輩は……修羅場が見えるわね。今後とも、女性関係には要注意という所ね」
「ま、マジで?」
「ええ。マジよ」
……修羅場か。
俺、某女垂らしみたいに、殺されてしまうのか?
首絞められて……こう、なぁ?
「続いて王女様の方だけど……相手を一途に想い続けることね。ひょっとしたら、その人は貴女の想いに気づいてくれる日が来るかもしれないわよ」
「一途に想い続ける……ですか。分かりました」
何かを決心したような表情を見せて、アイミーが言う。
……一体何を決心したのだろうか?
「次に王女様の方の今後だけど……少しの変化ありよ。身の回りのことでちょっとした変化や発見があるかも知れないわね」
「ちょっとした変化や発見……ですか?」
「ええ。けど、具体的な内容までは分からないから……どういう発見があるかは貴女が見つけてね」
「はい」
なる程……結構本格的な占いなんだな。
「続いて瞬一先輩の今後だけど……かなり大きな災いが起きるわね。そうね……大きさで言えば、大切な人の命か、瞬一先輩自身の命が賭けられるような災いが」
「やめてくれよ……まるで俺か誰かが死ぬみたいじゃないか」
「この状況を回避すること自体は……不可能みたいね。けど、最悪の事態だけは何とか回避できそうね」
「最悪な事態だけは、ね……分かった、以後気をつける」
「それが懸命ね」
……なんだかもの凄く不安が残るようなお言葉を頂戴したような気がする。
その後も、俺達は刹那によって数個占ってもらい、その後で1-Aの教室から出た。




