文化祭一日目
そして、準備も順当に進み、いよいよ文化祭当日。
この学校の文化祭は二日間に渡り行われる為、今日はその一日目となるわけだ。
因みに、劇の発表の方は二日目の予定となっている。
なかなかに好条件だと、俺は思った。
「( ~っ~)/」
……顔文字を出しているのは、北条だ。
今日は午前中に仕事が入らない為か、今から大和とどう過ごすか考えてる最中なのだろう。
んで、そのついでに妄想に突入したというわけだ。
……なんとも哀れな姿だ。
「学級委員がこんなのでいいのかよ……」
そう呟くのは、午前の間、劇の練習をしている予定の、大地だ。
……まぁ、イベントが開かれるのが幸いにも午後からということで、体育館は一応空いてはいるんだが、今日は体育館を使っての練習はしないつもりだ。
何せ本番は明日なのだから、今から練習したところで無駄だからだ。
しかも、今までにきちっと練習してるし、多分大丈夫だろうと思うし。
このメンバーなら、大した心配をすることなく成功に導いてくれそうだしな。
「……と言うわけで、文化祭一日目だね!」
「……まずはお前の脳内でどのような議論が繰り広げられたのかを聞かせてくれ」
正直、いきなりそんなことを言われても、『ああそうだな』位の反応しか返せないんだが。
「そこは『そうだね、葵』って爽やかに返すところだよ、瞬一」
「そのキャラは間違いなく俺じゃない……大和にでも頼んでくれ」
自分で想像するだけでも吐き気がする。
こんなのは、俺じゃないよな。
「けど、折角王子様役に選ばれたわけだし……」
「いや、俺がなりたくてなったわけでもないからな」
葵が書いてきた脚本は、王子とお姫様の二人が主役の、王道のラブストーリーだった。
確か舞台は戦争している二つの国で、俺が演じる主人公は、エーデル・ネルディングという名前の王子だ。
次期国王の座を約束された、まぁ所謂お坊ちゃまだ。
ヒロインは、織が演じるエルマー・ランカスト。
この二人の間に、様々な障害が起き、果たしてこの二人は結ばれるのか……というのがこの物語のテーマだな。
貴族間同士の愛というと……どうしてもロミオとジュリエットを思い出さずにはいられない。
「けど、ぴったりの役だと思いますよ……?」
「うん、瞬一にぴったりの役だね!……正直織ちゃんが羨ましいくらい」
「瞬一君は、やっぱり王子様だよ!」
「……なんで俺はこういう役回りをする羽目になってるんだ?」
正直目立つのはあまり好きじゃないんだがな……。
拒否しようにも、この三人の涙目には勝てず、結局俺は王子の役を引き受けたというオチだ。
「……さて、俺も午前は暇組だし、アイミーの所にでも行ってくるか」
「アイミー?アイミーンさんの所にいくの?」
「ああ。約束してるからな」
しかも、校長からも、だ。
まっ、二人きりというわけじゃなさそうだし、どうせシュライナーがついてくるんだろうな。
「……ずるい、アイミーンさん」
「王女様だからって、抜け駆けはいけません……」
「……会って話しをしてみたいものだね」
あ、あれ?
三人の目が、なんだかマジになってるのは気のせいか?
「じゃ、じゃあ俺は校門近くで待たせてるから!」
「あ、ちょっと待ってよ瞬一!」
とりあえず俺は午後からの仕事だから、今はアイミーのところに行かないとな。
……なんだかこの場に留まっていたら、命の危機に晒されそうだし。




