俺の命が……!!
いやぁ、たいそう驚かされた。
まさかアイミーがこっちに来ているなんて考えもしなかっただけな、その驚きも半端なかった。
隣では、嬉しそうに笑いながら歩くアイミーがいる。
……そして周りからは、男女問わず殺気が突き刺さってきた。
『だ、誰だよ……あの綺麗な人』
『知らないのか?この前日本に来た、グレイブスタン公国の王女様だよ』
『なんで三矢谷君と一緒に歩いているのかしら?』
『さぁ……けど、羨ましいわ』
『つ~か、瞬一ぶっ殺す!』
な、何だよ!
最後の言葉、明らかに俺の知り合いからの言葉だよな!?
……まさか。
「瞬一!これはどういうことだ!」
「ゲッ。晴信か……」
やはりな。
そこにいたのは、何やら凄い形相を浮かべている晴信だった。
なんであんな顔してんだよ、アイツは……。
「葵や一之瀬だけじゃ飽きたらず、ついには一国の王女様にまで手を出しやがって!!」
「なんのことだか全然分からないっての!!」
このままじゃ本当に殺されかねない。
自分の命を守る為にも、この場はなんとしても逃げる―――!!
「というわけでアイミー、ちっとばっかし我慢しろ!」
「へ?……キャッ!」
所謂、お姫様抱っこというやつだ。
……しかし、アイミーは軽いな。
本当に食事をきちんと取ってるのか?
「お、お前……」
「邪魔だ!!」
ゲシッ!
さすがに校内で魔術を使うわけにはいかないので、俺は晴信の―――いや、男の弱点に蹴りを入れる。
……気持ち悪いな、おい。
「ちっとばっかし揺れるけど、しっかり捕まってろよ!」
「は、はい!!」
およそ数メートルの逃走。
自分のクラスまで逃げ切れたら、俺の勝ち。
それまでに捕まっしまったら、俺の負けだ。
ルールは単純ながらも、こちらは明らかに不利だ。
けど、逃げるしかない。
ここから逃げないと、待っているのは俺の死。
「……シュンイチ///」
何やら顔を赤くしている様子のアイミーだが、この際気にしていられない。
アイミーには申し訳ないが、このまま逃げる!!
「そ、総員、三矢谷瞬一を、追え……」
「「「「「サーイエッサー!!!!!」」」」」
こ、こんな時だけ団結力を発動させてんじゃねえよ!
せめて体育祭の時にでも出しとけっての!!
「三矢谷瞬一……覚悟!」
「危ねぇだろうが!コッチには一国の王女様がいるんだからよ!」
アイツ、俺に向かってファイアーボールを飛ばしてきやがった!
アイミーに当たったりなんてしたらどう責任とるつもりだ!!
「……大丈夫です。当たらないようにしっかりと抱きついてますから」
ギュッ。
ちょっ……未体験の感覚が、俺に襲いかかってくるんだけど……。
柔らかいものが二つ、俺の胸に……。
「……コロス」
「ちょっと待て。何でカタカナ表記になってやがるんだ。マジで殺すき満々じゃねぇか!」
冗談じゃない!
こんな所で人生終わらせてたまるか!!
「ふんぬ!」
全力で俺は走る。
後少しで教室だ……!!
「よっしゃ!」
ガラッ!
俺は扉を開き、何とか教室に逃げ込むことが出来た。
よし、コレで俺は生き延びることが出来た!!
「……瞬一、これはどういうことかな?」
「瞬一君、覚悟はいい?」
……教室の中に入ってみると、鬼の様な形相をしている葵と織の二人がいた。
他のクラスメイト達も、一瞬で臨戦態勢を取っていた。
……どうやら、俺の命は、救われることはないらしい。




