呼び出しって、こんな……
「よく来てくれたな」
「そう何度も俺のことを呼び出さないでくださいよ……何だか俺、S組の中の問題児扱いされてるじゃないですか」
「まぁ、問題児ではないのだから、それでいいだろう?」
……そういう問題じゃねぇよ。
まったく、分かっていて言ってるのか、この校長は。
「それで、俺を呼び出した理由っていうのは何なんだ?」
「何、難しい話でもない……話は二つある」
二つか……その口ぶりから言うと、片方、いや、両方が重い話の可能性大だな。
……にしても、何で俺に重いようなことを言うかね。
「うむ。何故かは知らぬが、君はどうやら、事を運ぶのが上手らしいからな」
「……それって、俺がある意味の疫病神って言ってます?」
「まぁ、そうとも言うな」
そこは否定してくれよ。
俺、某小学生探偵が活躍する漫画の中の主人公的役回りしてるようで、嫌じゃん。
行く先々で事件が起きる……業界用語を使うのなら、クローズドサークルという奴か。
……閉鎖的空間でもなんでもないのだが。
「一つ目は……前にこの学校で起きた通り魔事件、いや、由雪迅が引き起こした事件についてだ」
……やはり重い話題から出してきたか。
それにしても、よりによってその話題とは。
「この件については……お主達はもう、無駄な詮索をしないで欲しい」
「……え?」
意外な言葉だ。
まさか、そうくるとは思ってなかっただけに、俺は少しの間言葉を失った。
「どうしてですか?というか、別に詮索する気もいまさらないですけど……」
あいつの目的は、もう分かっている。
それに、その本人が行方不明なのでは、もはや何もしようがない。
「……ならいいのだ。なんでもない、忘れてくれ」
「……はぁ」
校長は、そこで言葉を切る。
……少しの沈黙の時間が訪れる。
「それで、もうひとつの方は?」
あまり時間をかけるわけにもいかないので、俺は二つ目の話を聞くことにした。
すると今度は、心持ち楽しそうな表情を作っていた。
……今度は軽い話題か。
「実はな、先日この学校で文化祭が開かれることを、グレイブスタン公国の国王に連絡しておいた」
「……それで、それがどうしたんですか?」
「彼が言うには、文化祭が開かれる前後の日にちに、王女が来日するそうだ」
「へぇ~王女様が来日するんですか……って、はぁ!?」
グレイブスタン公国の王女って言うと、アイミーのことだよな!?
何だよそれ、急すぎだろ、おい!!
「……驚いているようだな。しかし、無理もないだろう」
「……はい、俺は今、凄く驚いています」
それはもう、腰が抜けるのではないかと思うくらいに。
否、もう抜けてた。
「そうか……なら、これからもっと驚くことが起きるな」
「……まさか」
「その、まさかだ」
校長は椅子から立ち上がり、部屋の後ろの方へ歩く。
来客室の扉を開き、手招きをするような動作をする。
そして、そこから出てきたのは……。
「久しぶりです、シュンイチ!」
「あ、アイミー……マジで?」
明るい笑顔を振りまいている、アイミーの姿がそこにはあった。
「い、いつの間に来てたのか……アイミー」
「はい!早くシュンイチに会いたくて!!」
「そ、それは嬉しいな……」
何だかこっちまで気恥ずかしくなってくる。
自分の顔が赤くなってきているのを感じた。
「……どうしたんですか、校長先生?」
「いや、何でもない」
意味深に笑う校長の顔は、何でか知らないけど、無性に腹が立った。
「それでは、用件は以上だ。王女と一緒に教室へ戻るがよい」
「え、そ、それは……さすがにやってはいけない気が……」
「平気だ。王女はしばらくの間、この国に滞在しているのだぞ?この学校も、王女の見学場所として例外ではない」
……つまり、俺に案内役を務めろということですね?
「そうともいう」
……そうか、面倒な役を押し付けられただけともいえるのか。
まぁ、アイミーの案内役だから、面倒でも何でもないんだけどな。
「んじゃ……とりあえず、俺達のクラスに行くか?」
「はい!」
アイミーの返答も得られたことだし、とりあえず俺達は一旦S組に向かうこととなった。
にしても、国王様も結構あれだよな……。
放任主義といえるのか、これは……。




