またかよ……
何をやるのかを決めてから、一週間が経過した。
俺達は本格的に準備段階に入った。
文化祭まで後数週間。
劇の練習も順調に進み、出店の方も料理の勉強をしている最中だ。
北条の料理が壊滅的だったのを受けて、学級委員ながら劇に専念することとなった。
俺と葵に春香、そして転入生である織の四人は、劇と出店の両方を担当することに。
大和と大地は劇に専念し、その他クラスメイトもボチボチと分かれることになった。
ちなみに琉川は、ケーキ屋の方に専念することになっている。
「……大変になるだろうけど、葵、春香、織、よろしくな?」
「大丈夫だよ!劇やりたいって言ったのは私だし!」
「わ、私も大丈夫です……劇といっても、簡単な役みたいですし」
「劇の方の担当と言っても、私は台本とかの方だしね」
織・春香・葵の順番で答える。
……まぁ、文化祭なんだし、楽しくやれればそれでいい。
そんな感じも、しなくもなかった。
けど、やるからには全力で。
それが、俺のモットーでもある。
「それより、大変なのは瞬一の方だよ……劇とケーキ屋の両方を担当してて、大丈夫なの?」
心配するように、葵が尋ねる。
……心配してくれるとは大変嬉しい。
俺としては、何としても成功させなくてはという気持ちを感じさせるものだ。
「ああ、大丈夫だ。両方ともやるって言っても、ほとんど俺は劇の方に専念するつもりだからな……ケーキ屋は、琉川を中心にやってもらうさ」
本来なら、学級委員の片割れである俺がケーキ屋の方に行ったほうがいいと思ったのだがな。
北条の料理さえ壊滅的でなければ……。
そして、クラスの奴らからは、
「お前しか主役はいないだろう!」
「劇の主役は、お前がやれ!!」
「適任じゃないか!」
……何故か劇の主役は俺がやる羽目に。
俺、そんなに演技力はある方じゃないと思うんだけどな。
けど、その後で葵・春香・織の三人からも、
「しゅ、瞬一君は絶対主役だよ!」
「そ、そうです!瞬一君は主役でなくてはなりません!」
「ボクが劇を選んだ理由がなくなっちゃうよ!」
最後の織の言葉はどこか引っかかるようなものを感じるが、まぁいいだろう。
とにかく、俺達は、今は劇の練習をすることにしよう。
そんなことを呟いていたその時だった。
ブゥウウウウウウウウウウウウ!
突如、例の呼び出し音がなる。
そして、
『二年S組、三矢谷瞬一、至急、校長室へ来るように!』
……またか。
まったく、うちの校長は、どうやら呼び出すのが好きらしいな。
「また瞬一が呼び出されたね……今度は一体、何をしたんだい?」
「俺がいつも悪いことをしているようなことを言うな。大体、俺は呼び出されてはいるけど、一度たりとも悪いことはした覚えはない」
確かにその通りなのだ。
今まで何回か呼び出されたりはしているが、そのほとんどが重大な情報を伝えるものなのだ。
まぁ、前のグレイブスタン公国の例だったり、その他諸々。
「まっ、何があるのかは知らないけど、とりあえずいってくるよ」
「行ってらっしゃい、瞬一」
しかし、今回は何で呼び出されたんだろうな……。
とにかく、俺は呼び出した先生の指示通り、校長室へ向かうことにした。




