あの国にて
Sideアイミーン
「うむ。うむ……分かった」
ガチャッ。
お父様は、誰かと電話をしていた。
こんな時間に、誰と電話をしていたというのでしょう?
「お父様?一体誰と……」
「ゲンザブロウだ。今、お前にとって大事な連絡が入った」
「私にとって、ですか?」
それは一体どんな連絡でしょう?
……まさか、シュンイチの身になにかあったとかじゃありませんよね!?
「ハッハッハッ!そんな心配そうな顔をせんでもよい!そんなに悲しい知らせではないのだからな」
「……では、一体どんな?」
「うむ。今度の月に雷山塚高等学校・中学校で行われる行事のことだ」
「行事……ですか?」
この時期に、何か珍しい行事でも開くのでしょうか?
……分かりません。
「今度、雷山塚高等学校・中学校にて、文化祭が開かれる」
「ぶんかさい……ですか?」
「……我が国ではない風習だからな。知らなくても当然か」
お父様は、一度そう一人で呟いてから、
「文化祭というのはだな……厳密に言えば様々な調べ事を発表したり、前もって準備していた物を公表する場なのだが……簡単に言ってしまえば、祭りが学校で行われるようなものだ」
「祭りが学校で……何だかそれ、楽しそうです!」
「うむ。楽しいだろうな……話には聞いているが、私も行ったことはないからな」
でも、どうしてゲンザブロウさんはそのことを電話で伝えたのでしょう?
……私にはあまり関係のないことにも聞こえるのですが……。
「そこでだ。アイミーン、シュライナーと共に日本に行け」
「え?日本に……ですか?」
「そうだ。そして、この文化祭を満喫してくるのだ」
お父様は、私にそう言ってくださったのです。
私が、『文化祭』に行く……。
しかも、雷山塚高等学校というと、シュンイチがいる学校……久しぶりにシュンイチに会えるということです!
「嬉しそうだな。この話を持ち出して正解だったな」
「そ、そんなことは!……それよりも、お父様は行かれないのですか?」
この話の流れだと、私とシュライナーだけで行くことになるのですが。
……お父様は、この学校へは行かれないのでしょうか?
「ああ。私はこの国での仕事が残っているからな。行けそうにはない」
「そうですか……なら、私も手伝いますよ?」
「よいのだ、アイミーン。このくらいの仕事なら、私と残りの使用人を使えば十分こなせる量だからな」
そう言われてしまうと、私は何も言えなくなってしまいました。
沈黙の時間が、数秒間続く。
やがて、お父様が口を開きました。
「……雷山塚高等学校へ行き、日本の人々と交流を深めてくるがいい。それが今回、お前に与えられた仕事だ……我が娘、アイミーン・グレイブスタンよ」
「……はい!」
『仕事』。
日本と同盟を結んでから、私達の国と日本は比較的友好的な関係にあると思われます。
ですが、私達の方からは、あの日以来日本には行っていません。
これは……シュンイチに会えるだけではなく、日本の方々と交流を深めるチャンスでもあるのです。
「……では、準備しておきますね。どれくらいいればいいですか?」
「好きなようにするがよい。帰りたくなったら私の所に電話を入れてくれ。帰りの飛行機を渡そう」
「!?……いいのですか?」
「ああ。たまには羽を伸ばすのもよいだろう」
「あ、ありがとうございます!」
そうと決まれば、早速準備です!
私はお父様にお礼を言って、慌てて自分の部屋に戻って準備をし始めたのでした。
……待っててくださいね、シュンイチ。
久々にアイミーンの登場です。
……瞬一の周りの状況が、さらに激化すること間違いなしです。




