S組の文化祭の出し物
「……さて、今日は俺達から話がある」
そう話を切り出したのは、もちろん俺、三矢谷瞬一だ。
俺と北条は今、黒板の前にたち、皆と面等向かっている格好をとっている。
何故こんなことをしているか……その理由は、
「来月からの文化祭の出し物を、今日のこの時間に決めちゃいたいと思ってるんだけど、皆も協力してくれるわよね?」
そう。
来月から始まる文化祭の出し物を決めている最中だったのだ。
黒板には、俺の字で書かれた『文化祭の出し物』という文字が書かれているが、提案はここまで0。
しかし、S組の癖によくもまぁ計画性のない奴らが集まっているものだ。
例えば、『写真館』だったり、例えば『下心満載メイド喫茶』であったり。
どれもこれも、絶対規則に引っかかるだろうというものばかりであった。
ていうか、正直俺もそんなのやりたくはない。
「他に意見はないか?」
「グループ発表というのは、どうでしょうか?」
「グループ発表か……案には入れておくか」
誰かが言ったその案を、俺は黒板に書く。
さて、お次は。
「やっぱ無難に喫茶店じゃね?」
「さっきより安全ね。書いといて」
続いて俺は、喫茶店という文字を書く。
……やっと出し物が二つ出てきたか。
「やっぱり文化祭だし、クレープ屋だよな!」
「……それは何処の世界の決まりごとだ?」
晴信がA組に落ちたから、そういうことを言う奴がいなくなるとは思っていたが、むしろその逆だった。
新しくA組にあがってきた橋本隆二という人物が、晴信の代わりの位置に座ることとなっていた。
……どうしてこういうボケ役というのは撲滅しないのだろうか。
「う~ん……劇もやってみたいな」
「劇か……織らしい意見だな」
織が立ち上がり、劇という意見を出してきた。
確かに、劇というのもいいかもしれないな……とりあえず黒板に書かなくてはな。
「んで、他に意見はないか?」
「な、なら……占いなんてどうでしょう?」
「占い?」
占いという提案を出して来たのは、春香だ。
何だろう……春香は占いに興味があるのだろうか?
「占い出来るのか?春香」
「はい。少しなら」
「そうか……なら、案に入れとくか」
これで四つか。
……まぁ、そろそろ頃合か?
「んじゃ、他に意見は……なさそうね」
誰も手を挙げない所をみると、どうやらこの四つ以外に案が出ることはなさそうだ。
……写真館とメイド喫茶は封じておいてよかった。
ていうか、メイド喫茶は絶対他のクラスと被るしな。
「それじゃあ多数決で行くわね……まずはグループ発表!」
北条の声が教室に響く。
手を挙げたのは……二人か。
「次は、喫茶店!」
今度は……十人ほどか。
やはり喫茶店とかの方が、儲けとかもあるしな。
「劇の人、手を挙げて!」
続いて、劇。
……お?今度は二十人ほど手が挙がったな。
「最後に、占い!」
これは……春香を含め、三、四人か。
占い出来る奴、四人はいたんだな。
「というわけで、S組の出し物は、劇ということに決定したわ!それじゃあ役割というか……とりあえず誰かに脚本を書いてきてもらいたいんだけど……」
「あ、脚本なら私が書くよ!」
「葵が?書けるのか?」
正直、少しだけ不安なんだが……だって葵だし。
「大丈夫だよ。私、本とかたくさん読んでるし」
「……俺も一応本は読んでるけどな」
「どうせライトノベルでしょ?」
「何故限定する、北条……否定しないけど」
否定できないところが、結構痛いな。
まぁとにかく、こんな感じで文化祭の出し物は順当に決まって行った。
……けど、文化祭というのは楽しいものでもあるが、同時に大変なものでもある。
果たしてこのクラスで、劇なんて出来るのだろうか?
少しの不安と、たくさんの楽しみを抱きつつ、その日はお開きとなった。
今回から文化祭編に参りたいと思います。




