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Magicians Circle  作者: ransu521
通り魔事件編
206/309

姿を現す者

「……ふん」


迅が、鼻で笑う素振りを見せる。

目の前に広がるのは、もはや荒地となった場所。

葉や石、土などが散乱し、建物の一部のようなものもあった。

門は一部崩壊し、足元にそのカケラが転がっていた。

そこに……大和と大地の二人も転がっていた。

息こそしているが、それも虫の息。

死にはしないだろうが、これ以上動けない。


「……結局、『組織』の人間もこの程度だったって話か。俺の魔術に耐えられないようじゃ、『組織』の壊滅も近いんじゃないか?」


一人呟く迅。

だが、彼の周りにいるのは、気絶した人間ばかりで、答える人は誰もいない。


「……」


迅は、瞬一の元に歩み寄る。

瞬一の頭の前で立ち止まり、横を見る。


「……光の器(てんし)か。そんな力なんて、最初からなくなればいいのにな……けど、俺の目的を完遂する為には、今となっては必要な力」


隣で気絶している葵の顔を見て、迅はそう呟く。

現在、迅にとって光の器(てんし)である葵の存在は必要不可欠。

その力は、強力故に、暴走したら止めることが出来ない力。


「……過酷な運命を背負わされた奴にしか分からない苦しみを、コイツは無自覚の内に背負ってるってわけか。ま、そんなのどうでもいいけどな」


葵の体を担ぎ、迅はその場から立ち去ろうとした。

その時だった。


「……ああ!?」


突如、後ろから弓矢が飛んでくる。

迅はそれを避ける為、慌てて左に体をずらす。

だが、その時に葵の体を手放してしまう。


「くっ……はぁ!?」


更に、驚き。

今度は、自分の目の前を素早く通過する何かを見た。

そしてそれが通り過ぎたかと思うと、葵の体はそこにはなかった。


「な、何が……何が起きているってんだ!?」

「……由雪迅。どうしてその名を、私は思い出せずにいたのだろうか」

「後ろか……!!」


後ろから聞こえる声に反応し、首をその方向に持っていく迅。

そして、そこにいる人物を見て、


「……ククククク、ヒャハハハハハハッハハハハハッハハハハ!!」

「かつて私が指示した、『寺内麻美排除計画』における、寺内麻美の関係者であった……由雪迅」

「そういうお前は、この学校の校長であり、『組織』の元管理長、石塚源三郎じゃねぇか!!」

「……いかにも。私は元『組織』の人間である、石塚源三郎である」


そこに立っていたのは、源三郎であった。

いつものスーツ姿で、手には携帯らしきものが握られていた。


「まさかアンタに会えるとはな……心から感謝するぜ」

「ふむ。いくらお主とて、私の大事な教え子。本来ならば手出しすることすら戸惑うものだが」

「おいおい、冗談はやめてくれよ。俺はアンタのことを殺そうとしてるんだぜ?最も、アンタがあんなふざけた計画を立ててくれたから、俺は闇魔術を習得することが出来たんだけどなぁ」

「……あれはやむをえない判断だったのだ。その事に関しては、本当に申し訳なかったと思っている」

「そんなんで済むと思ってんのかよ!!」


迅は叫ぶ。

源三郎は、動じない。


「俺はな、この何年間か、アンタを殺すことしか考えてこなかった!そして今!ここで俺の目的は完成する!!寺内麻美の命を奪った、アンタを抹殺することで、目的は達成される!!」

「……分かっておらぬのか?私の病気は、既に治っておる」

「分かってるっての。さっきの魔術を見て、俺はとっくに気づいている」


迅は、面倒くさそうに答える。

だが、次の瞬間には、それも愉快そうな笑顔に変わっていた。


「けどなぁ、もうそんなことどうでもいいや!!俺は、アンタを殺せればそれでいいし!!」

「……悪いが、私はお主に恨まれる筋合いはない。お主が本当に倒すべき相手は……別にいる」

「この期に及んで罪を認めない気か……いいだろう、好きなだけ暴れてやるよ!!」

「……仕方あるまい。不本意だが、全力で相手することにしよう」


そしてここに、迅の『計画』が完遂されるかされないかの戦いが、始まった。













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