失望
「……?」
大和は、少し戸惑いの表情を見せる。
突然迅が笑いだしたのだ。
だから驚きの表情を浮かべるのも、当然と言えば当然と言えるだろう。
構わず、迅は笑い続ける。
「ヒャアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「ど、どうしたってんだ……由雪迅は?」
大地は、思わず自問自答していた。
しばらく笑った後で、迅は答える。
「ああその通りだ。その通りだともさ!!」
「……じゃあ、君の目的は」
「そうさ!『組織』の管理長だった石塚源三郎の抹殺!ただ、アンジック病が治っちまった奴を殺すには、前準備が必要だったってわけさ!だから俺は直接殺すのではなく、この学校毎生き埋めにしちまえばいいと考えた!俺が今やってるのは、この学校を破壊する為の魔術の復活だ!古代より伝わりし闇の魔術の、『破滅術式』の復活だ!!」
「……大分目的が変わってると思うけど、そうか。君は、魔術が使えるようになった石塚源三郎に、正面で挑んでも無駄だと思ったんだね?」
大和が、短く結論を告げる。
すると、
「その通りだ!お前らだって知っているんだろ?アイツの魔術の凄さは!管理長になる前からすでに実戦を積んできたと見える!だから俺は無駄だと分かった!なら、他の奴らなんかどうでもいいから、この学校を丸潰しにすればいいと考えた!!」
「……だから魔力を集めて、その魔術を完成させる為に、他人の血を……」
冷静に解析する大和。
そして、未だに笑っている迅に、告げた。
「……その完成は、無理だね」
「なっ……!!」
真っ向から否定された迅は、その表情に驚きの色を見せた。
構わず大和は続ける。
「君が目的としている『破壊術式』の完成だけど……さっきの森谷の発言は覚えていないのかな?」
「……何のことだ?」
「『世界を破壊する魔術はない』って言葉だよ。何故そんなことが分かったと思う?」
一旦言葉を止め。
そして大和は言った。
「それは、君が殺そうとしている……石塚源三郎が、そのことについて証明してみせてるからだよ」
「なっ……!」
「彼は、『破壊術式』の完成の為に、様々な研究を続けてきた……それこそ、他人の魔力を集めさせたりとかもした。最も、その魔力は、魔術による犯罪を犯した死刑囚のものだったけど……けれどその完成は、不可能だということが判明したんだ。理論上なんかじゃない。これは、実際に証明されてることなんだ」
「……そ、そんな、バカな」
一気に落ち込む、迅。
「……落ち度だな。もう少し、情報を集めるということをしなければならないな」
「……まさか、術の完成が不可能だったとはな……だが、俺の目の前に『組織』の人間がいることには変わりない。つまり、ここでお前らを殺せば、石塚源三郎も現れるかもしれないということだ!!」
「……やれやれ。いくら君でも、僕達二人に勝つには、なかなか労力がかかることだと思うけど?」
呆れながら、大和は言う。
だが、迅はそれでも尚、笑っていた。
「構わないねぇ!どうせお前らがまとまったって、俺には勝てないから!闇魔術の継承者であり、悪魔にすら打ち勝った俺の魔力に、敵うはずがない!!」
「……悪魔に打ち勝った?」
大和は、迅のその一言の真偽を計れずにいたが、
「行くぞ『組織』の飼い犬……たっぷり泣かせてやるぜ!!」
「……気に食わないね、その表現は」
「やるぞ、大和」
「言われなくても、そのつもりだ!」
迅と大和、大地の三人は、互いに衝突しあった。




