頭角を現す
「ハァッ!」
ガキン!
刀と剣が、互いにぶつかり合う音が響く。
力比べでは、どちらも負けてはいない……ようには見えた。
「……弱いな。全然弱い」
「なっ!」
迅は、剣を持つ手に力を込める。
そして、完全に瞬一の刀を振りきった。
「……はぁっ!」
そしてそこから瞬一の喉元狙って突きをしてきた。
瞬一はそれをギリギリのところで左に避け、体をひねり、
「喰らえ!」
迅の右わき腹を思い切り斬りにかかる。
だが、
「……効かないな」
「なっ!?」
その攻撃は、迅に当たることなく、寸前のところで止まっていた。
こんな短時間のうちに、迅は魔術を発動したというのだ。
しかも、無詠唱で。
「これは剣と刀のぶつかり合いなんかじゃねえんだよ……魔術を使った、殺し合いなんだぞ?それくらい理解しろよ!!」
剣を瞬一のわき腹めがけて思い切り振る。
瞬一は、止まっていた体に力を込め、刀をその位置までもっていく。
「さぁ……生を謳歌しろ!!」
迅がそう叫んだ瞬間。
迅の周りに、黒い魔法陣が現れる。
そしてそこから、黒い矢らしき物が現れた。
「……くっ!あらゆる害から身を守る不可視の壁よ。我の身を守れ!!」
瞬一は、そう詠唱して、周りに結界を張る。
それと、迅の出した矢が飛んできたのは、ほぼ同時のことだった。
それらはぶつかり合い、激しい衝突音を響かせて、消えていった。
「聖なる雷よ。我が右手にその力の一部を宿せ!」
そして、すかさず瞬一は反撃に出る。
だが、
「鮮血よ。その体よりまき散らせ!」
瞬一の繰り出した雷撃をかわし、迅はその間合いを0にする。
そして、右手で瞬一の体に触れ、
「ブラッドスプレッド!!」
ドン!
何かの衝撃音が、瞬一の体の中から発せられる。
次の瞬間。
「ぶはっ!」
体中から、大量の血があふれ出てきた。
口から……手から……足から。
様々な部分から、血が流れ出てきたのである。
「しゅ、瞬一!」
葵の表情が、一瞬にして陰る。
そんな葵の表情を見て、
「……いいぞ。いい。この調子だ。この調子でコイツを殺せば……上質な光の器が手に入る
」
不気味な程の笑みを浮かべていた。
対する瞬一は、
「……っや、やるじゃねぇ、か……」
全身から血が流れていて、立っているのもやっとの状態だ。
このままでは、確実に出血多量で命を落としてしまうだろう。
「お前も……闇魔術を継承したって、言うのか……?」
「まぁ、その死に損ないの体をしながらも、そのことについて尋ねることの勇気と精神力の強さを評価して、特別に教えてやろう……答えは、その通り、だ」
迅は、愉快そうな表情と共に、そう告げた。
さらに言葉を繋げる。
「俺はな、悪魔と契約して、闇魔術を手にした。すべては『計画』を成功させる為。俺が討つべき人物を、見つける為にな」
「討つべき……人……?」
「これ以上は教える必要はないな。何せお前は、この場で死ぬのだからな」
「しゅ、瞬一!」
晴信達が、瞬一の元へ急いで駆け寄る。
だが、
「邪魔だ、虫けら共」
迅のその呟きと共に、黒い弾が何十発も飛び交う。
そしてそれらは、晴信達の体に何発も着弾していた。
「み、みんな……!」
「……終わりだ。お前らはここで、死ね」
迅が瞬一の心臓に、剣を突き刺そうとしていた、その時だった。
「……待ちな、由雪迅」
「……アアン?」
大和の言葉が、迅の動きを止める。
迅は、不愉快そうに大和の顔を見た。
「……何だよ、テメェ。テメェもあの虫けら共のように死にたいのか?」
「……『組織』という名前は、さすがの君でも知ってるよね」
「!!……お前、まさか」
「そうだよ。僕は、君が追っている、『組織』の人間だ」
「そ……し……き?」
瞬一には、その言葉の意味が分からなかった。
しかし、その言葉の真偽を確かめる前に、瞬一は気を失っていた。




