対峙
「……ついに姿を現したか、由雪迅」
「……ったく、俺のことをコソコソと隠れて探索しやがって。お前達は中々にウザイな」
相手を牽制するように、迅は瞬一達に言う。
だが、瞬一達は冷静に迅を見ていた。
「……へぇ。こんなこと言われても、動じないのか」
「お前のおかげでな……コッチもいい加減に慣れてきたところだ」
晴信が、お返しといわんばかりにそう言葉を返した。
これには、さすがの迅も、眉をひそめた。
だが、それだけだった。
「……誰かと思いきや、お前はあの時の雑魚か。まったく、あの時にあの男が来なければ、今頃は命すらなくなってるかも知れなかったなぁ」
「……冷静になるんだ、晴信。彼の言葉に耳を貸してはいけない」
大和が、晴信にそういう。
だが、言われなくても、晴信はひどく冷静だった。
「……晴信?」
心配そうな声で、葵が尋ねる。
だが、
「大丈夫だ。何とか」
「……そう?」
「あまり無理はしないでくださいね?」
「……ああ」
晴信は、迅の顔をじっと見つめながら、答える。
葵や春香の問いには、首をその方向に向けることなく、ただ迅のみを見て答えていた。
……精神を集中させている為だろう。
「三矢谷、とか言ったな」
「……ああ。そうだけど」
「お前が、あの日行方不明になったとかいう男か」
『あの日』とは、春香の一件があった日のことだ。
瞬一は、その事が瞬時に分かって、
「……ああ。そうだ」
「そのままいなくても良かったのにな……お前が戻ってきたおかげで、俺の苦労が増えたじゃねぇか」
「お前の苦労なんか知ったことか。俺が戻ってくるのも勝手だろう」
さも当たり前のように、瞬一は答える。
だが、迅はあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「折角光の器の様子がおかしくなったってのに……テメェのせいでそれもパァだ。ったく、感動的な再会シーンなんて、望んでなんかいなかっての」
「なっ……!」
光の器というと、春香の兄である辰則が悪魔にとり憑かれた際、その悪魔が言っていたことだ。
その人物とは……。
「……私?」
「細川さんが?」
葵が自分のことを指差して、そう呟いた。
隣にいた真理亜も、思わず尋ねてしまう。
「そうだ。俺の目的の完遂の為に、もし光の器がいたとしたら、かなり時間が短縮できたはずだった……けど、お前が予想外に早く帰ってきたから、光の器の調子も戻っちまって、結局計画は最初から考えていた通り、他人の魔力奪ってくことでしか達成できなくなっちまったってもんだ。メンドイことさせやがって……」
「……お前の目的は何だ?」
大地が、声を低くして尋ねる。
この際に、瞬一と大和、啓介の三人は、空・葵・真理亜・春香の四人を、安全な場所に避難させていた。
「……学園の壊滅。いや、この際言ってしまうか……この世界の破滅だ」
「!?」
驚きの色が見えていた。
驚かざるおえなかったのだ……それだけ、迅が言ったことは、かなりの破壊力があった。
「学園の壊滅……?」
「それに、世界の破滅って……」
啓介と空の二人は、そんなことを呟いていた。
もちろん、口には出しいていないだけで、他の人達もその言葉の意味を汲み取ることが出来ていなかった。
「……お前達が知った話じゃない。どうせお前らはここで全員死ぬんだからな」
「させると思うか?」
瞬一が刀を造りだし、その刃先を迅に向けていた。
「……面白い。なら俺も、その勝負、受けてたとうじゃないか。ただし、コレは授業でも、クラス分け試験の様なつまらない戦闘じゃない……正真正銘、魔術服の加護のない、殺し合い《ゲーム》だ」
「……負けて、死んで後悔するのはお前の方だ、由雪迅」
「……気が変わった。目的の為、『計画』を完遂する為、光の器を頂くことにする。その為には、お前が邪魔だ。三矢谷瞬一」
「言うじゃねぇか……由雪迅がぁ!!」
瞬一が思い切り地面を蹴り上げ、迅の元に接近していく。
そこから、二人の戦闘が始まった。




