対決
敵は、瞬一達めがけて確実に襲いかかってきていた。
ぶれることなんてない……まるで、何者かの意思が介入しているかのようだった。
「コイツ……しつこい!」
瞬一は、目の前にいる黒い影と応戦していた。
人数のおかげもあって、一人当たり二、三体となっているが、それでも瞬一達の動きが制限されているのは明らかだった。
「さてと……吹き飛んじまいな!!」
晴信が敵に向かってそう叫ぶ。
すると、敵と晴信の間で小さな爆発音が響く。
敵を壁に向かって吹き飛ばし、やがてその敵は、激突した。
「よし……その調子だ!」
大和は、自らが創り出した剣で敵と応戦しながら、晴信に向かってそう叫ぶ。
同時進行で、春香は、
「我らの傷を癒したまえ!」
傷ついた人達を回復しつつ、自らに近づいてきた敵は、最低限の攻撃で身を守る。
そういう戦闘スタイルをとっていた。
「風よ舞え。疾風のごとき、彼の者を包みこめ!」
大地は、敵が迫ってくる目の前に竜巻を作る。
その中に敵をおびき寄せて、戦意を失わせようという作戦だ。
だが、それも失敗に終わる。
「なっ!?」
何とその敵は、大地に向かって突撃してこなかった。
代わりに、竜巻を貫通するかの勢いの黒い弾を撃ってくる。
「ちっ!」
竜巻を止め、すぐさまその攻撃をかわす。
目標を失ったその黒い弾は、そのまま何処かへ消えていった。
「このっ……!」
その横では、真理亜が剣を握り、敵に斬りかかっている姿が見えた。
その相手もまた、黒い剣を握っている。
「くっ!私の攻撃をまるで予測してるみたいに……」
苦闘していた。
真理亜が右に斬れば、そこに合わせてきて。
左に斬れば、そこに合わせてくる。
敵は、真理亜の攻撃を予測しているかのような動きを見せていた。
それは偶然の産物ではない……先ほども述べた通りの、何者かの意思が込められているかのような感じだ。
「みなさん!ちょっとの間だけ済みません!!」
空は、一同にそう声をかけてから、
「大地よ。我が声に答え、その身を揺らせ!」
瞬間。
地面より音が鳴り響き、まるで地震が起きたかの様に揺れていた。
「うわっと!
何とか体勢を持ちなおした啓介は、目の前で膠着している敵を見て、
「よしっ!……数多なる緑の葉よ。我に抗う者に制裁を与えよ!」
周囲に生い茂っている木々から、啓介はその葉を借りる。
風に乗ったそれは、周囲にいる敵を、まるでブーメランの如く飛び交い、斬り裂いていた。
中にはその攻撃をかわすものもいたが、
「豊かなる風を纏い、私の前に姿を現して!」
葵が召喚した精霊により、風の勢いが増す。
啓介の攻撃と、葵の精霊の攻撃が見事に重なり合い、最早敵が逃げることは、出来なかった。
「……よし。こんなものだろう」
気づけば、瞬一達の周りにいた敵は、跡形もなく消え去っていた。
「ほう……俺の人形達をすべて消し去るとは、お前らでもそれくらいは出来るのか」
「!!」
声がする。
しかし、瞬一達の視界に、その人物は映っていない。
だが、声だけで、誰なのかを特定することが出来た。
「……由雪、迅」
「俺のことを、囮作戦なんかでおびき出せるとでも、本気で思ったのか?どこまでおめでたい連中なんだよ、バカども」
「なっ……!」
殺気は、タダものではなかった。
少しでも気を緩めれば、気絶してしまうのではないかと思うほどの殺気。
それほどまでに、由雪迅は、近くにいた。
「背後だよ。お前達のな」
「……後ろ?」
恐る恐るその方向を振り向くと、そこには、
「よう……愚かな人間共?」
不敵な笑みを浮かべた、由雪迅が、そこに立っていた。




