様子がおかしい晴信
次の日。
俺は……いつも通りに学校に来ていた。
正直……寝起きはあまりよくない。
昨日あんなニュースを聞かされたのだ。
気分よく眠れるはずがない。
「……お?晴信だ」
学校に向かう道の途中、俺は晴信の姿を見つけた。
なので、一応声をかけてみる。
「よう、晴信」
「……ああ、瞬一か」
「……どうしたんだお前?何か様子が変だぞ」
こんな晴信は珍しい。
朝からハイテンションなのが、いつもの晴信だろう。
「……瞬一。学校に着いたら、話がある。部活のメンバーと、大和と北条、大地も呼んでくれ」
「……ああ、いいけどよ」
こんなに思い詰めた表情を浮かべている晴信は、初めてだ。
いつもの明るさは、そこにはなかった。
何というか……衝撃的真実を知ってしまったような、そんな表情だ。
「……本当に、何があったんだ?」
「……学校に着いてから話す。だから、それまでに気持ちの整理をさせてくれ」
「あ、ああ……」
今の晴信は、一人にさせておいた方がよさそうだな。
「……じゃあ、先に学校へ行ってるぞ」
「そうしてくれると、助かる」
晴信にそう告げてから、俺は足を若干早めて、学校へ向かう。
……本当に、今日の晴信は何なんだ?
「……お、大和か。ち~す」
しばらく歩いていると、今度は大和の姿を見つけた。
横には、大地もいた。
「あ、おはよう。瞬一」
「……早いな、瞬一」
「まぁな。昨日はあんまり眠れなかったんだよ」
「……魔術格闘部の光平が、例の通り魔の被害者になった件だよね?」
なんだ、大和にはもう行き届いていたのか……。
どこから情報を集めたのかは、敢えて聞かないことにしよう。
「俺もその話は聞いた。けどよ、まさか小野田が襲われていたとはな……考えてもいなかったぜ」
予想外だと言わんばかりに、大地が答える。
……俺も、まさか小野田が襲われるとは考えもしなかったな。
「んでよ……さっき晴信に会ったんだけどよ……なんだか調子がおかしいんだ」
「晴信の調子が?」
意外だと言わんばかりの表情を浮かべて、大和は尋ねてきた。
それもそうだろうな……何せあの晴信だ。
基本明るい性格をしている奴が、突然変な調子になったら、誰だってそんな反応をするに決まってる。
「後で話があるんだとよ。お前らも込みで、らしい」
「話が?」
「……ああ、分かった」
大地はすぐに頷き、大和もその後ですぐに頷いた。
……にしても、晴信の話というのは、何なのだろうか?
気になりながらも、俺は学校へと向かって行ったのだった。
「みんな揃ったな」
教室には、異様な空気が流れていた。
S組の教室の、晴信の机の周りに、何人かの生徒が集まっている。
俺含め、大和・大地・葵・春香・啓介・北条の七人だ。
ちなみに、クラス分け試験の結果が発表されるのは一週間後の為、今は前のクラスのままということになる。
「それで、話って、何でしょう?」
開口一番に、春香がそう尋ねる。
重い唇を開き、やがて晴信は言った。
「……昨日俺は、刹那が通り魔に襲われそうになっていた現場に遭遇した」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
七人分の声が重なる。
無理もないだろう……それはつまり、通り魔に遭遇したということに直結するのだから。
「……刹那ちゃんは、無事なの?」
心配そうな表情を浮かべ、葵は尋ねる。
すると、
「ああ。外傷は特にない……今日は休んでるけどな」
「……そっか」
ホッとする葵。
だが、もう一つ肝心なことがある。
「……相手の顔は?」
「……見たぜ」
北条の言葉に、躊躇いがちに晴信は答える。
そして、こう言葉を繋げた。
「……通り魔は、由雪、迅だった」




