身近な被害者
んで、その後の部活への道のりでの間の会話。
「お疲れ、晴信」
「……」
まるでこの世が終わったのではないかと思われる程の表情をしている晴信。
そこまで出来が悪かったのか……。
「……駄目だった。全然駄目だった……わけわからない問題があったし」
「確かに……最後の問題とか、意味が分からない問題でしたよね」
春香もそう思うか……よかった。
あのテスト、絶対に作題者側である教師達は、遊んでるよな。
マリオの売上とか、キングダムハーツのキャラ全員言えとか(というか、後者に関してはかなりのキャラ数を誇るのでは?)。
「あはは……きっとS組に残留出来るよ、晴信」
「無意味な慰めはいらねぇ!」
別に無意味でもなんでもないと思うけどな……。
けど、葵の言葉すら素直に受け入れられないとは……これは重症だな。
「お?そんなことしてる内にも、着いたな」
そんな会話をしている間にも、俺達は闘技場に到着していた。
中に入り、魔術格闘部の部室まで足を運ぶ。
……にしても、何だか微妙に様子がおかしい。
なんだろう、この焦燥感は。
何かが起ころうとしている……そんな気がする。
「さて、中に入るよ?」
「一々確認しなくてもいいだろ……」
葵が何故か俺達に確認をとってから、中に入った。
中には既に、
「あ、こんにちは」
「先に来てるわよ」
「ち~す」
植野姉妹と啓介は、すでに部室で待っていた。
だが、この三人がいるのに、小野田はまだ来ていない。
「あれ?小野田は?」
俺は三人に対して尋ねる。
だが、
「えっと……私は知りませんけど」
「アゴ先輩のことなんて知ってるはずないじゃない」
「アゴ先輩……」
なかなかにシビアな呼び方だよな、相変わらず。
まぁ、その呼び方に納得しかける俺も俺なのだが。
「……聞いてないのか?お前達は」
「ん?何か知ってるのか?啓介」
俺の変わりに、晴信が尋ねる。
すると、啓介は重い唇を動かして、言った。
「小野田は……通り魔事件の被害者となった」
「「「「「「……え?」」」」」」
……一瞬、空気が凍った。
通り魔って言葉が聞こえた気がするんだけど……。
「啓介、それはマジか?」
「ああ。今朝、E組の奴から聞いた。だから間違いない
「小野田まで襲われたのか……」
ついに、俺達の身近の人物まで襲われた。
しかし、今日は九月一日だ。
そして、大抵通り魔は学校内の生徒を狙っての犯行だったはず。
失礼な話しだが、アイツがわざわざ学校に来ていたとも考えにくい。
「それがな……小野田が襲われたのは学校内じゃなくて、図書館からの帰り道だったらしいんだ」
「図書館からの帰り道?……全然学校と関係ないんじゃないんですか?」
「……つまり、もはや安全な場所はなくなったことになるわね」
春香の言葉に繋がるように、刹那が答える。
……その通りだ。
これまでは、学校内のみで発生していた事件なので、学校の外にいさえすれば襲われることはなかった。
しかし、今は違う。
学校の外にいたとしても、襲われる可能性は高くなったのだ。
「……何だか、怖いなぁ」
葵が、両手で自分の体を抱きしめながらそう呟く。
……俺も、少し恐怖を感じていた。
通り魔か……一体、どんな奴が、何のためにこんな犯行を犯しているというのだろうか……?




