二学期、開幕
九月一日。
今日からいよいよ、二学期の始まりだ。
八月の暑さが、まだ少しだけ俺の体にしみわたる。
……さすがは九月も始まりの日だ。
蝉がまだ鳴いている……気がする。
「よう、瞬一!」
「……晴信か。おはよう」
こんな暑さなのに、晴信の奴は元気だなぁ。
「今日からまた学校が始まるんだ。明るく元気に行こうぜ!」
「こんなクソ暑い日に学校が始まるのはいかがなものかとも思うけどな……」
「情けないなぁ、瞬一」
……何だろう。
言葉に出来ない程の怒りを、晴信に対して感じているんだが。
「さて、そろそろ着くぜ。俺達の母校に!」
「……晴信、今日が何日か、覚えているか?」
「九月一日。始業式の日だろ?」
「始業式の日には、何があるか覚えているか?」
「始業式には!……クラス分け試験が……ある、な」
「だろ?」
そう。
九月一日である本日は、二学期のクラスを決めるクラス分け試験が存在するのである。
まぁ、この試験自体は形式的なような物で、要はそのクラスの一番バカな生徒を下のクラスに落とし、一番頭がいい生徒を上のクラスに持ってくるという、なかなかに理不尽な内容だ。
ちなみに、それはS組でも例外ではない。
「今回は筆記だけだからな……前回のように魔術戦闘オンリーというわけではないから、お前にとっては相当きついだろうな」
「……瞬一、一生のお願いがある」
「何だ?晴信」
何だよ、晴信の顔が嫌に真剣なんだけど……。
一体どんなお願いをする気なんだ?
「お前の……試験中にお前の答案をカンニングさせてくれ!」
「断る」
よりによって最低なお願いしてきやがった!
しかも、一生のお願いがそれかよ。
コイツ、どれだけ自分のプライドと未来を捨ててるんだよ!
「お前は俺が下のクラスに落ちてもいいってのかよ!」
「……どうせ部活とか帰り道で一緒になるわけだし、別に気にしたりはしないな」
「友達を大切にね!」
なんだようるさいな……お前はともかく、勉強しないのが悪いんだろうが。
今さら俺がお前の心配したって、結局は無駄に終わるんだよ。
「……それにな、俺がお前の前の席になるかどうかも分からないのに、どうやってカンニングするって言うんだよ」
「……あ」
ほら、穴に気付いた。
晴信は、まるでこの世が終わってしまったかのような表情を浮かべている。
……そんな表情をする位なら、日頃からもっと勉強しとけよ。
いつ試験があっても困らない位によ。
「あ~今日もいい天気だな~。始業式迎えるにはもってこいの天気だよな~」
「うざいからそれやめろ!」
「さっきお前も言ってたことだろうが。我が儘だな、晴信は」
「今はそんなこと言ってる場合じゃなくなったんだよ!!」
御愁傷様、晴信。
けど、俺達は学校に向かって歩いているんだから、もうすぐ学校に着いてしまうぞ?
「そうこうしてる内に……」
「あ……あ」
晴信、死刑宣告を言い渡されるまで、残り後数時間。
「嫌なモノローグを入れるな!」
泣きそうな顔で晴信がそう言ってきたが、無視無視。
ともかく、俺達は学校に到着したのだった。




