一息一息
「やっぱり兄ちゃんは凄いなぁ」
「そうでもないよ。学校に行けば、俺よりも強い奴なんか結構たくさんいるからな」
「けど、兄ちゃんS組にいるんだろ?」
「……まぁな」
俺がどのクラスに所属しているのかは、クラス発表があって何日か経ってから連絡したんだっけか。
確か……病院からだったから、慌てて母さんと父さん、そして幸太の三人が病院に来たんだっけ。
「それにしても、あの時はびっくりしたよ……だっていきなり病院から電話が来るんだもの。一体何が起きたのかと思ったよ」
「ああ……あの時は、心配させてすまなかったな」
「いいっていいって。大した怪我でもなかったみたいだし」
まぁ、実際は大怪我負ってたけど、心配させないためにそんなに大きくは言ってないだけなのだが。
「にしても、お前も結構強くなったもんだな……誰からあんな攻撃の仕方を教わったんだ?」
「え?父ちゃんだけど」
「父さんか……なるほどな」
俺達の父さんは、何故だか知らないけど、戦闘に関して言えばいろんな知識を持っている。
まぁ、父さんの仕事というのが、戦闘関係の仕事だからな……。
簡単にいえば、魔術を使った自衛隊という奴だ。
正式名称は、確か……。
「魔術特殊国防自衛隊、だったと思うよ?」
「ああ、そんな感じの名前だったな……てか、心読んだのか?」
「ううん、兄ちゃんの口から漏れてたよ?」
……またか。
何で俺は心の中の言葉を口に出してしまう癖があるのだろうか?
何としてもこの癖だけはなんとかしなければな……。
「父さんは今日も仕事か……」
「ていうか、帰ってくる日の方が少ないよ。兄ちゃんが東京に行っちゃったのと一緒で、沖縄の方まで遠征に行っちゃってるわけだから」
「……そうだったな。父さん、次はいつ帰ってくるんだろうな?」
「兄ちゃんこそ次はいつ帰ってくるのさ?」
「……冬休みには帰ってくるよ、多分」
「多分!?」
だって冬休みの時は、マジで帰れるかどうかわからないんだもの……。
何せ、残った宿題を片付けなければならないし。
寮の部屋の大掃除も済ませなければならないし。
他にもやることがいっぱいあってだな……。
「あ、そう言えば兄ちゃん。うちに織姉ちゃんが来たけど……兄ちゃんはもう会ったのか?」
「織が?……ああ、もう会ったけど。つか、何故か京都の修学旅行の時にも会ったけどな」
「京都で?……なるほど。運命を……」
「感じないからな。相手は織だぞ?何で織相手に運命を感じなければならないんだ?」
「……兄ちゃんは鈍感だな」
また鈍感って言葉が聞こえてきたような気がするんだけど……。
何だか最近、俺はその言葉をしょっちゅう聞くようになった気もしなくもない。
大和とか晴信とか、たまに大地とか葵からも言われる。
特に葵なんかは、少し怒ってるような感じで。
……俺、何かしたのかな?
「にしても、幸太にはまだ色恋沙汰は見当たらないようだしな」
「なっ!……確かにそのことは否定できないけどさ」
「ひょっとしたら、うちの高校に来たら目当ての女子の一人くらいはいるかもしれないぜ?」
「う~ん、どうだろうね……文化祭の時に見てみることにするよ」
「もううちの文化祭来るの確定かよ」
雷山塚高等学校の文化祭は、中学の文化祭込みで行われることになっている。
つまり、かなり大規模な文化祭となるのだ。
来客数も、中高合わせての数だから、大分多いんだよな。
「それじゃあ、早く帰ってうちでゲームしようよ!」
「そうだな!久しぶりに格ゲーでもやるか?」
「さっきリアル格ゲーしたばかりだから、レースゲームにしようよ!」
「それもそうだな!」
帰りながら、俺達はそんな会話をかわしていた。
あ~今日は修学旅行以来の暴れっぷりだったかもしれないな。




