修学旅行もついに終わりか……
朝食を食べ終えて、バスに乗り込むように俺達は指示された。
最終日である今日は、特に観光するところがあるわけではないらしい。
「あ~今日でもう帰宅か…」
「早いものだな」
とりあえず、俺達は現在、部屋に戻っている。
理由は、バスがまだこっちに来ていない為だ。
「道が混んでいるのか……」
「可能性は高いね」
「……こんなところでか」
晴信、こんなところっていうのはどういう意味だ?
夏に来てしまったから、紅葉とかは全然駄目だけど、それなりに寺などを観察(?)出来ただけまだましじゃないのか?
「んじゃ、最後の女子部屋侵入を……」
「すんな。面倒臭いし、帰るのがある意味遅くなるから」
大地が言うことにも一理あるな。
晴信が女子部屋に侵入したら……まずは女子にぼこされる。
それだけなら他人にも迷惑がかからないし、俺達の気分も晴れて天晴れなんだが、その後に晴信の体が修復するまでの時間が待っている。
この時間が長いか短いかで、俺達の帰宅時間が遅くなる可能性も否定は出来ないからな。
最も、晴信には科学では証明出来ないギャグ補正があるけどな。
基本、どんなに命の危険に晒されたとしても、何故か高確率で生き残っているからな。
「人は晴信のことを、笑いの神に守られし奇跡の天才と呼ぶ」
「いやぁ~それほどでも~」
「……褒めてないし」
晴信に、大地がそう突っ込んでいた。
……あ、心の中の言葉が口に出てしまっていたか。
気を付けないとな。
「けどやることないよな~」
「……その部分だけは認める。けど、だからと言って何かをする必要もないだろ。どうせバスもすぐ来るだろうし」
晴信が暇そうに呟いて、大地がそれに反応する。
……なんだか、この二人での会話が多くなってるような気もしなくもないな。
晴信がボケ役で、大地がツッコミ役の二人漫才って見方もあるがな。
「二人とも……仲良くなったね」
「まぁ……前より会話するようになったけどよ、これは仲良くなったと言えるのか?」
大和は二人のことを微笑ましそうに(と言うか、何故?)眺めていたが、俺にはそうは見えないんだよな。
なんというか、晴信が何かを言って、大地が軽く流すパターンも時々あるし。
「……にしても、楽しかったよな、修学旅行」
「……そうだな」
晴信の言う通りだ。
今回の修学旅行は、中学の時よりも更に楽しくなった修学旅行だったと思う。
前はここまでバカなことをした記憶はないし、心から楽しかったと言えるような内容ではなかった。
班員が微妙なメンバーしか集まらなかったのもあるが、やはり今回の修学旅行は最高だったろう。
むしろ、今までの旅行行事の中でも一番と言えるかもしれない。
それほど今回の修学旅行は……楽しかった。
とりあえず、そう答えるしかなかった。
「……僕も、ここまで楽しかった旅行はないと思うよ」
「……俺もだ」
大和が何時もの笑顔でそう言って、大地は若干恥ずかしい為か、顔を赤くしてそう答えた。
「お?恥ずかしいのかぁ?」
「……死ぬか?」
「嫌だ」
如何にも武器を取り出しそうになった大地に向かって、晴信は即答する。
その時に、
「バスが来たから、みんなバスまで来て!」
と言う先生の声が、外から聞こえてきた。
「……行くか」
「「「ああ!!!」」」
カバンを持ち、俺達は部屋を出る。
……またな、京都。
いつか必ず、またこの地に来てやるからな。
そんなわけで、波乱に満ちた修学旅行は、ここに幕を下ろしたのだった。
……けど、俺は明後日に、一旦実家に帰らないといけないんだよな……。
というわけで、修学旅行はこれにて終了。
次回は瞬一が実家に帰ります。




