終わってみれば……
その後も俺は、絶好調だった。
大富豪と富豪の間を行ったり来たり……していたはずだった。
なのに、いざ最終ゲームに入った途端に、
「……あれ?」
なんでこんなにも引きが悪くなったりするのだろうか?
何故……みんながバンバンカードを出してくるのだろうか?
終わってみれば……。
「敗者は……貴様だ!!」
「……あれ?」
本当に、何があったと言うのだ?
いきなりこんなになるなんて……。
信じられない、まさかこの俺が……この俺が!?
「うん、お前が大富豪だよな」
「ですよね~」
あれだけ前振りしときながら、俺は結局、大富豪であがりました、はい。
いやぁ~調子良かったなぁ、今回。
「というわけで……大貧民となった、佐々木啓介!」
「は、はい!!」
……結局、最後に大貧民になったのは、それまで平民等の無難な線を辿っていた、啓介だった。
最後は本当に可哀想だったな……ほとんどカードを出せずに終わるなんて。
「んで、なんだかんだで小野田が貧民か……惜しかったな」
「何が!?」
いや、だって小野田をおちょくるのって、晴信を弄る程でもないけど、楽しいじゃないか。
本当なら晴信を陥れたかったんだけど、いかんせん晴信は運がいいからな……。
ちなみに、順位で言うと、俺・大和・晴信・大地・小野田・啓介の順番だ。
……我ながら見事な戦いを繰り広げたような気がするぜ。
「罰ゲームは……そうだな~悩むな~」
軽めの罰ゲームだと、啓介は助かるだろうけど、俺達が納得出来ないし。
重すぎると、なんとなく次の日から啓介に口を聞いてもらえなくなりそうだしなぁ。
難しいところだ……よし。
「決めたぞ!」
「か、軽めの罰ゲームにしてくれよ……」
懇願する啓介。
……悪い、正直言って、その表情はなかなかに厳しいものがある。
葵とかにやられると良心が痛むかもしれないけど、男の啓介……しかも出っ歯でそれをやられても、むしろ軽い苛立ちすら感じてしまいそうだ。
「今日の風呂の時間に、女子風呂に特攻する!!」
「嫌だよ!!」
……まぁ、そうだろうな。
俺だって、そんなことを命令されたとしても、まずやらないしな。
「やだと言われてもな……ルールだし?」
「もっと軽めの奴にしてくれよ!」
「おやおや?敗者が何を言ってるんだ?」
晴信が追い討ちの如くそう言葉を投げつける。
それは現実なので、啓介はもはや何も言えなくなってしまっていた。
大和も、
「観念しなよ、啓介。君は負けたんだから」
「男に二言はない……そうだろ?」
大地も、啓介に対してそう囁くように言って、
「はっ!そう言うのは、勝ってからにするんだな」
……最後に小野田も、啓介のことを見下すようにそう言った。
いや、クラスで言えばお前の方が下なんだがな。
「くっ……分かったよ。その罰、受けてやるよ!」
「そうでなくちゃな」
啓介が決意を固めたところで、
「ん?そろそろ入浴タイムじゃね?」
「え?もう!?」
心の準備が出来てなかったのだろう啓介は、かなり焦っていた。
いやぁ、風呂の時間が楽しみだな、まったく!
「んじゃ、そろそろ風呂の準備もしなくちゃな……おい、お前らもしとけよ」
「ちょっと待ってくれ!……今からでも、考え直してくれないか?」
「拒否」
俺は、啓介にそう告げた。
しかも、即答だった。
もはや、啓介にはなんの希望も残されていなかったのだった……。
ちなみに、あの後啓介の罰ゲームは遂行され、啓介は使い古されたぼろ雑巾の如く、ボロボロになって帰ってきた。




