大富豪一回戦目
……人数が六人というのもあって、手札の枚数は若干少ない部類に入るのだろう。
俺の手札は、というか全員の手札が九枚となっていた。
つまり、ジョーカーは二枚とも入っているルールだ。
けど……俺の手札はなかなかに強い、と思う。
「まずは俺からだ。ダイヤの三を持ってるからな」
一番手は晴信だ。
晴信から時計回りに、大和・大地・俺・啓介・小野田の順番だ。
まぁまぁな順番だろうな。
「まぁまずは順当にダイヤの三から出すか」
晴信は、手札よりダイヤの三を出す。
次に大和は、
「……よし、これにしよう」
少し考えた後に、ダイヤの六を出してきた。
ゲッ……縛りか。
「縛りと来たか……けど、出せないことはないんだよな」
そう言いながら、大地はダイヤの七を出してきた。
すると、次は俺の番か……。
「……どうしよう」
俺の手札を公開すると、ハートの四、ハートの五、ダイヤの八、スペードのJ、スペードのQ、クラブのA、ハートの二、スペードの二、そして……ジョーカー。
……強くね?
「よっしゃ。ダイヤの八で八切りだ」
「ちっ!」
俺はダイヤの八を出して八切りをする道を選んだ。
そして、再び俺の番か。
……どうしよう、これ。
「う~む……よし」
悩んだ末に、スペードのJを使って、11バックをする道を選んだ。
「もちでバックな」
「それなら……クラブの八で八切り」
「またか?!」
ああ……さっきの舌打ちといい、今の叫び声といい。
小野田が段々哀れに見えてきた。
「そして、六の三枚出し」
「な、何!?」
啓介が、いきなり三枚出しを繰り出してきた!?
と言うことは……啓介の手札は、合計四枚減ったことになる。
……やるな、一番乗り気じゃなかったくせには。
「ぱ、パスだ……」
小野田は、さすがに三枚出しは無理な様子で、ここでパスを使用した。
「……俺もパスだな」
「それじゃあ、僕が出させてもらうよ」
「な、何!?」
今度は啓介が驚きの声を挙げる。
……さすがは大和だ。
こんな時でも強運に見舞われているなんて。
「それじゃあ……このカードで」
「「「「「な、何!?」」」」」
大和が出したのは、ハートの九・クラブの九・スペードの九の三枚出し!?
と言うことは……クーデターが発生しただと!?
「……やってくれるじゃねえか、大和」
「やるからには本気を出させてもらうからね」
やはりコイツはタダものじゃない。
勝負の時の運も、半端なく強い……これはなかなかの強敵だ。
もちろん出せる奴は誰ひとりいるわけもなく、
「これは流れるな」
晴信が、カードを横に置く。
そして大和は、
「さて、妥当な線で行こうかな?」
そう言いながら出してきたのは……ハートの七。
うしっ。
そのカードなら出せるぜ。
「んじゃ……五切りさせてもらうぜ」
俺は、ハートの五を出して、五切りさせてもらう。
「んで、また俺の番なんだよな……んじゃ、クラブのAで」
今はその勢力が衰えてしまった、Aを出す。
すると、
「甘い!なら俺は、クラブの三ヲ出させてもらう!」
啓介が、三をついに出した!?
これには、さすがの大和も動揺するだろうな。
小野田・晴信の二人はもちろんパスだ。
「……本当は使いたくはなかったけど、ここで使わせてもらうか」
「……まさか!」
「その、まさかだよ」
そう言いながら大和が出したカードは……ジョーカーだと!?
「ゴメンね。僕も上がりたいからね……そして、Jの三枚出しで、11バックを使わせてもらうよ」
……いやいや、コイツはどんだけ運が強いんだよ。
みんなクーデター発動してるから、強いカードを持ってないような状況だぞ?
逆にそんなことされたら……。
「クッ……パスだ」
大地がパスを繰り出した。
……この勝負、もらった。
「お前の頭の回転のよさと運の強さには感銘を受けたよ……けどな、どうやら運は、俺に向いていたようだな!」
バシン!
強烈に地面を叩く音が、部屋中に響く。
そして、俺が出したカードは……。
「なっ……ジョーカーを交えた二の三枚出しだと?!」
これで俺の持ち札は、一気に減った。
残すは、四とQの二枚のみ。
「それじゃあ行かせてもらうぜ……まずは四だ」
「……流せ」
11バックの状態はもう終わったから、すなわち今は、クーデターが発動している状態ということだ。
つまり、四はかなり強い。
「ふっ……これで、終わりだ!」
勝利宣言と共に、俺はQを出す。
……まずは俺が、大富豪だ!!




