一時の別れ
しばらく俺達は、織と一緒に行動していた。
その間は、本当に騒がしい物となっていた。
人数が九人となっていたのもあるが、
「やぁ!この小野田光平を……」
「呼んでないから自分の班の所にさっさと戻れ」
途中で相手にしてほしかったのかどうかわからないけど。
小野田が何か寺入り口の所で突っ立っていたり。
「……何祈ってるんだ?」
「ん?世界征服よ」
「!?」
「……冗談よ」
クラスメイトNを見つけて尋ねてみれば、そんな冗談が返ってきたり。
「んで、瞬一の小学校の頃の話しをしてもらえないか?」
「うん、いいよ!……瞬一君はね、小学生の頃、私がアメリカに行くことが決まった時、泣いて僕のことを……」
「引きとめはしたけど、泣いてはないぞ」
過去のねつ造、いくない。
とりあえず織の口から俺の恥ずかしい過去が話されるのを全力で阻止したりと。
なんだかんだで本当に騒がしい一時間となったのだった。
しかし、そんな時間は結構短い物で。
「……もう時間だな」
「え?もうですか?」
大地が時計を見て呟くのに、春香が驚きの声をあげる。
もう集合時間五分前なのか……早いものだな。
「それじゃあ、織とはこれでお別れか……」
「ま、どっちにしろ来月からは同じ学校に通うことになるんだけどな……同じクラスになるかならないかはともかく」
晴信の言うとおりだ。
来月……というか、後二週間もないような気がするけど、二学期からは俺達と同じ、雷山塚高等学校に入ることとなっている。
ああ……ただでさえ騒がしい学校生活が、もっと騒がしくなりそうだなぁ。
「みんなと別れるのはちょっと寂しいけど……僕も九月からは同じ学校に入るんだから、それでいいや」
「そうだね!……後でその日の瞬一の話しを、詳しく……」
「お~い葵。悪魔の誘惑には負けちゃいけないぞ~」
お前は俺のいない所で、俺の過去の話しを聞こうとするな。
「お~い、そこの班!もうすぐ集合時間だぞ!」
「え?……ヤバい、後2,3分よ!」
「ま、マジで?」
今度は琉川が時計を見て、そう叫んだ。
急がないと先生に怒られるな……と、なんとなく呟いてみたり。
「名残惜しいけど、一時の別れだ。また九月に会おうぜ」
「そうだね!……うっ」
「ん?どうした?」
集合場所に向かおうとした直前。
織が右手で頭を押さえる姿が見えた。
「な、何でもない……ちょっと頭が痛くなっただけ。軽い頭痛だと思うけど……」
「大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫」
心配そうに春香が尋ねるのに対し、大丈夫と言う織。
……小さい時は、頭が痛くなるなんてことはなかったのになぁ。
あ、小さい時とかは関係ないのか。
「本当に大丈夫か?あまり無理はするものじゃないぞ」
「……うん、ありがとう瞬一君、心配してくれて」
「これくらい、親友として当然だ」
そう。
織は親友なのだから……親友が倒れるのは、つらいことだから。
だから俺は、織にそう言ったのだ。
「それじゃあ……あんまり無理だけはするなよな、織!」
「瞬一君こそね!……みんなも、またね!」
「うん、じゃあね!」
織に別れの言葉を言って、今度こそ俺達は集合場所へと向かった。
ヤバいヤバい……時間がない!
Side織
時々襲われるこの頭痛は、一体何なんだろう……。
アメリカに行って、日本に帰ってきた時から、何日に一回かの感覚で、頭が痛くなる。
……直前に行った病院と、何か関係があるのかなぁ。
それよりも……。
「来月から瞬一君と同じ学校に通うのか……同じクラスになれるといいな」
僕の顔は、自然と笑みがこぼれたような気がした。




