相手にするのも嫌になる
「な、なに……?」
「嬢ちゃん。可愛いねぇ~?俺達と一緒にいいことしない?」
……ああ、近頃めっきり激減した、男三,四人でのナンパって奴?
女の子一人を囲いこみ、問答無用で連れていくという……心が弱い人達がよくやる手だよな?
「エクスタシーなんて感じるのはどうだい?」
「もう我慢出来ないでござるよ……ハァハァ」
……二人程病院に連れて行った方がいいと思う人がいるんですけど。
「彼ら……こんな貴重な文化財の前でナンパなんかして……許せないわね」
「風紀も乱れるしな、琉川」
「お前が言えた義理でもないだろうに……」
バスの中で散々あんなこと言っていた晴信が言えた義理ではない。
琉川の意見は……うん、正しいな。
ここは仮にも歴史的重要文化財(かどうかは知らないけど)である奈良の大仏が置かれている場所だ。
そんな場所でナンパなんて……コイツら、仏教嘗めてるな?
「いいぜ……お前らがその気だって言うのなら、まずはそのふざけた行動を、ぶち殺す!!」
「……どこの旗男だ?お前は」
晴信、それは伝わる人にしか分からないぞ。
しかも、アイツの名言借りる程、お前にはフラグなんて物は立っちゃいないしな。
「おいおい、そこのお前達!国の歴史を語る上で必要な物の前でナンパたぁいい度胸じゃねぇか!!」
「……晴信、それじゃあただの不良だよ」
大和が若干呆れがちに、しかし笑顔は崩さずにそう突っ込みを入れる。
……無理せんでもいいのに。
「アアン?何だお前は?」
「死ぬか?」
「……サーセン」
攻撃もせずに、たったの三秒で撃沈。
……晴信、いくらなんでも臆病すぎない?
「何でお前は魔術で攻撃をしないんだよ」
戻ってきた晴信に一言そう言ってみた。
すると。
「……その手があったか!」
「お前バカか!」
横にいた大地が、晴信に突っ込みを入れる。
春香が戸惑いの表情を、大和がよく分からない笑顔を浮かべていること以外は、他の人達は全員呆れた表情を浮かべていた。
もちろん、俺含めて。
「晴信……本当にS組だよね?」
「ああ。正真正銘、シークレットクラスさ!」
「……多分S組の『S』は、スペシャルの『S』だと思いますけど」
「一之瀬さん。素直に答えなくていいのよ」
真剣に答えた春香に、琉川が突っ込みを入れる。
……突っ込みに対する突っ込みって言うのもあるんだなぁ。
「そんなことより、今はあのナンパだよ!」
「……うしっ。大和・大地・瞬一、行けぇえ!」
……虚勢というか、何と言うか。
とにかく、晴信に言われなくても、大地・大和・俺の三人は、ナンパ達に向かって歩いていく。
そして、
「おい」
まず最初に、俺がそう切り出した。
「アアン?お前もあの腑抜けの仲間か?」
「こちとら最近飢えてるんだから、邪魔すんなよ!」
「ハァハァ……可愛い子は、渡さない」
「エエエクスタシィイイイイイイイイイイイイイイ!!」
……お前達に言いたいことがある。
とりあえず……。
「とりあえずお前達、病院へ行け」
「「「「なっ!?」」」」
なにものすごくショック受けてんだよ。
そんな反応してたら、そう言葉を返されるのは当然だろうが。
「テメェ……よくも言ってくれたな!!」
「We will kill yours!」
「いっきま~す!……ハァハァ」
……もう嫌だ。
コイツらを相手にしてると、こっちにまで馬鹿が移ってしまいそうだ。
そんな馬鹿は……。
「Fクラスのオンボロ設備でも体感してこい!」
あ、また分かる人にしか理解出来ないネタを……。




