謎の音
と、言うわけで。
「奈良の大仏がある所……東大寺にやってきました」
「へぇ~奈良の大仏って東大にあるんだぁ~」
「……正気か?晴信」
春香の言葉にそう反応を示した晴信に、俺はそう突っ込みを入れる。
東大って……寺じゃねえし、奈良県にないからな。
それと、東大寺って寺は、今まさしく俺達の目の前に存在するからな。
「東大寺だろ?東大所属の寺ってことだろ?」
「違うよ、晴信……東大寺って言うのは、金光明四天王護国之寺とも呼ばれていて、奈良時代に聖武天皇が力を注いで建立した寺のことだよ。ちなみに、奈良の大仏は、文献によると盧舎那仏と言われていて、この寺の本尊にあるらしいよ」
「さすがは大和君!歴史にも詳しいなんて……ヽ(^o^)丿」
……北条。
時々お前の顔文字表現がわけわからなくなる時があるぞ。
それは使い方あってるのか、間違ってるのか?
「さて……ここからは自由行動らしいからな。大地・大和・晴信。俺達も本尊に行って、奈良の大仏とやらを拝みに行こうぜ?」
「俺もか?……まぁ別にいいけどよ」
大地も承諾。
大和と晴信は何も言わずとも、賛成している。
「あ、あの……私達もご一緒しても、構わないですか?」
「うん、私も私も!」
「無論、文句なし」
男四人で行っても、華がないからな……。
女子が、しかも四人もいるのは文句なしだな。
「ちょっと。何でこの変態と一緒に行かなきゃならないのよ!いるだけで風紀が乱れる!」
「何だと!男が変態で何が悪い!」
「……突っ込むとこ、そこじゃねえだろ」
明らかに拒絶反応を示している琉川と、そんな琉川に意味もない反抗をする晴信。
……見ていて何だか寂しくなってくる。
「はぁ……先に行こうぜ、みんな」
と、他の奴らを連れて中に入ろうとしたその時だった。
カン!という、謎の金属音が聞こえてきた。
「……今の音、何だ?」
「さぁ……何だろう?」
葵が、分からないと言ったような表情を浮かべる。
他の奴らの表情も見てみたが、やはり同様の物であった。
「……お前らはここで待ってろ。ちょっくら見てくる」
「いやいや何言ってるんだよ。ここはみんなで行くべきだろ?お前だけにいい所とらせてたまるかよ!」
いつの間にか琉川との喧嘩を終えてきたらしい晴信が、そんな反応を見せた。
……琉川も来ていたか。
「風紀の乱れはよくないわね……私も行くわよ」
「琉川もか?まぁ、琉川がついてくる分には構わないけど……どうせ俺達まとまって行くことになるんだろうし」
見ると、行く気満々なメンバーの姿があった。
……俺だけに行かせる気はないということかいな。
「分かったよ。みんなで行くぞ」
「そうでなくちゃな!」
何故か喜んでいる晴信。
……いやいや、喜ぶ意味がよくわからないんだけど。
「だってよ、こういうのって、何だか運命的な出会いとかありそうじゃん♪」
「……お前はここに残ってろ、晴信」
「ひどっ!?」
いや、だって……ねぇ?
明らかに何か裏を感じさせる奴なんか連れて行きたくないのは、当然の反応だよな?
「まぁいいじゃないか、瞬一。とにかく今は、音のした方に行ってみようよ」
「……だな」
とっとと行かないと、音を出していた正体が分からなくなってしまう可能性もある。
それだけは、避けなければならない……。
と、言うわけで。
俺達は音のした方に走って向かうこととなった。




