バスの中は騒がしいものだ
さて、俺達は今、バスの中にいるわけだが、やはり修学旅行に行くまでのバスというのは、騒がしくなるものなんだな。
……ここ、S組だよな?
やっぱり、何処のクラスも、修学旅行となるとこんなテンションになるんだろうな。
「どうしたんだよ瞬一?騒がなければ損だろうがよ!」
「……元気だな、お前。まぁ、確かに修学旅行に来て騒がないのもなんとなく損してる気分だけどな」
「だろ?だから、カラオケしようぜ!!」
……只今バスの中では、カラオケ大会が始まっております。
我がバスのバスガイドは若い女性なのですが、かなりノリノリの様子です。
マイクが三本くらいあるので、他のクラスメイト男子二人と一緒に、コブクロと綾香が一回タッグを組んで歌った歌を、デュエット風に歌っていた。
俺の隣の席に座る晴信は、まだかまだかと順番を待っていた。
後ろに座っているのは、大和に大地の二人。
大和は笑ってみんなのことを見ているが、大地は一人で何かの本を読んでいた。
……うん、気持ちは分かるけど、そんなことしてるとお前にもマイク回ってくるぞ?
「さて、お次は三矢谷と宮澤の強力タッグだな!」
「……は?」
「おう!」
おい、何を言っているんだクラスメイトHよ。
俺と晴信が、いつ強力タッグになったって言うんだよ!
「さぁ瞬一、マイクを持て!!」
「ちょ……俺はまだ歌うって言って……」
「曲名は、修二と彰で、青春アミーゴだ!」
な、何故よりによってそんな選曲!?
歌えないことはないけど、そんな歌は歌いたくないぞ!?
つか、話を聞け、晴信。
後、大和。
笑顔でマイクを渡してくるな。
「曲が始まったわよ!覚悟しちゃいなさいよ!」
北条もいつになくハイテンションだなぁ、おい。
顔文字で、『o(`▽´)o』というような顔してやがるぞ。
ムカつく程の笑顔だな……なんか曲も始まってるし。
「鳴り響い~いた、携帯電話、嫌な予感が、胸を過る~……」
意外に上手いな……晴信の奴。
こうなったら、俺も本気で歌わないとな。
「情けない~ぜ、助けてく~れ。例の奴等に、追われてるんだ。もう駄目かもし~れない。ミアミ~ゴ」
「「二人を裂くように、電話が切れた~!!」」
お……おお。
何だかそれなりに形にはなってるな。
歌になってるだけ、感動物だろうな。
やがてその歌も終わり、バスの中は……。
「ブラボー!」
「アンコール!アンコール!」
「だが断る!!」
……凄いテンションになってきたな。
もう、外に響いているのではないかと思われる程の騒ぎようだぞ。
大地なんか、ついに耳栓を取り出したか。
「う~瞬一も晴信も、歌が上手いね……」
「そうか?普通だと思うけどな」
反対側に座る葵が、若干体を此方に向けて、そう言ってきた。
……そこまで上手くもなかったような気もするけどな。
「謙遜すんなよ。お前、なかなか上手だったぞ」
「お前程じゃねえよ、晴信」
「そうか?ありがとよ」
短く晴信は俺に礼の言葉を言った後、
「よっしゃ~!次はお前、行ってみよ~!!」
そう言ってから、俺のマイクを手にとり、別の奴に回した。
……始まりからこんなハイテンションで、着いていけるかな……仮にも二泊三日はあるこの修学旅行。
舞台は京都と、少々ベタな場所ではあるが、それでも結構辛いところではあるな。
特に……こういう行事というのは、夜が一番テンションが上がり、活動も活発となる時間ではあるだろう。
……今回の修学旅行も例外ではないのだとしたら、少し休んでおく必要があるな。
少しでも夜長く起きていられるようにしないとならないからな。
「い~やっほぅ!!」
……凄く盛り上がってるところ悪いが、俺は一旦戦線離脱させてもらう。
最初の目的地である清水寺に到着したら、俺を起こしてくれ……。
誰に言ってるのか、自分でもよく分からないけどな……。




