幼馴染との遭遇
「おっと、すまない……」
「い、いえ、こちらこそ……」
謝ってから、俺はその人物の顔を見る。
……黒い帽子を被っていて、顔がよく分からないな。
服装は、何処のメーカーかは分からないけど、短パンに黒いTシャツ。
……失礼なのは重々承知なのだが、性別の特定が不能だ。
「……瞬一、何してるの?」
その時、隣にいた葵にそう尋ねられる。
物凄く不思議そうな顔で俺のことを見ているのが分かった。
「……いや、人物観察をしてただけだ。特に他意はない」
「それは失礼な行為だよ、瞬一」
そんなことは分かってらぁ。
けど、この格好をしている人物のことを気にするなと言う方がちょいと難しいだろうに。
「……しゅん、いち?」
「……?」
今、目の前の人物が、俺の名前を呼んだか?
いやいや、そんなことはないよな……葵が言っていた俺の名前をおうむ返しに言っただけだよな。
「……もしかして、三矢谷瞬一君?」
「え……?」
今度は俺の名前をはっきり口にしたな。
……名字は今の会話の中で登場しなかったよな。
すると、目の前にいるこの人物は、俺の知り合いだってことだよな。
「俺のこと、知ってるの?」
「瞬一君は、僕のことを覚えてないの?」
「……ん?」
『僕』って言ったか?
けれど、声は多分……女性のものか?
……もしかして、もしかしなくても。
「お前……まさか、織か?」
「そうだよ……神山織だよ、瞬一君」
……え、マジで?
織……なのか?
「学校に行ってみたのに、瞬一君は行方不明だって言うから……」
「ああ、それは色々と事情があってだな」
「心配したんだから!アメリカから帰ってきて、瞬一君が行方不明だって聞いて、もう会えなくなるのかもしれないなんて考えたんだから!!」
「それは悪かった……それと、心配してくれてありがとな」
そうか……織もまた、俺のことを心配していてくれた人の一人だったんだな。
こんな俺のことを、心配してくれてたんだ。
「……瞬一君、瞬一君!!うわぁあああああああああああああああああ!!」
「おいおい、抱きつくなって……葵もいるんだから」
「ひっく……葵?」
あ、織は葵のことを知らなかったな。
……てか、葵も織に会うのは初めてなんじゃね?
大和から話は聞いてるみたいだけど、こうして会うのは初めてだろうな。
「えっと……瞬一、この子はどちら様?」
「ああ……コイツは神山織。大和が言ってた俺の幼馴染だ」
「へぇ……彼が」
「彼?何言ってんだよ葵。織は女だぞ」
「ええ!?」
……いやいや、そこまで驚くことはないだろうに。
驚いたところで、織が女だという事実は変わらないぞ。
「だって、大和君が男の子って言うから……」
「アイツ、勘違いしてたんだな」
大和ですら勘違いするとか、何事だよマジで。
「酷いな……僕は女の子なのに」
「ご、ごめん……」
「それで、君は誰?」
「私?」
織に名前を聞かれた葵。
「私は細川葵。瞬一とは中学の時からの同級生だよ」
「……僕は幼稚園の時からの同級生、というか幼馴染だからね!」
「何の張り合いしてるんだよ、お前」
まったく織も、そんなことを言ったところでどうしたって話だよ。
あれ、葵は葵でなにやら顔を青ざめてるし。
「……まぁ、ここで話すのも難だしな。少し場所を移すか」
立ち話も難なので、とりあえず俺達は場所を移動することにした。
……寮に帰る途中だったんだけど、ま、いっか。
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