お前らまでいたのか
久しぶりの闘技場は、何処か広く見えた。
こんなにでかかったんだな……うちの闘技場は。
「部活で会うのは久しぶりね、瞬一先輩」
「まぁ……期末試験の後の部活は、あってなかったようなものだったからな」
実は期末試験が終わったその日も、我が部活は活動があったのだ。
ところがその時やったのは、俺が帰って来た記念パーティー的な何かだった。
……別にそこまでする必要はないって言ったんだがな、如何せん葵と晴信の発言力が強くてな……。
勝手に失踪していた俺には、そのことに関する発言力はまるでないからな。
その日はみんなからの好意(なのかどうかは不明だが)を甘んじて受け入れることにしたのだ。
「こんにちは、瞬一先輩」
「おう。優菜もな」
どうやらこの二人は先に来ていたらしく、すでにサンドバックが地面に転がっているのが見えた。
魔術の練習をしてたのか……感心感心。
「ところで、ビーバー先輩とアゴ先輩は?」
その時。
刹那の口からそんな言葉が出てきた。
……ビーバー先輩に、アゴ先輩?
誰だ、そりゃ?
「あ、そう言えば瞬一には言ってなかったよね……実は瞬一がいなかった時に、晴信に入部したいって言ってきた人がいたみたいなんだよ。それが……」
葵が何かを言いかけたその時だった。
「コラ!誰がアゴ先輩だ!?」
「ビーバー先輩って……どういうことだよ!?」
……あれ?
どうして啓介と小野田の二人が入って来たんだ?
コイツら、確か部活は無所属だった筈だけど……まさか。
「その、まさかなんです……」
春香が何やら困ったような表情を浮かべて、そう言った。
……え、マジで?
真面目にコイツらも入部したのか?
魔術格闘部に?
……いやいや、ご冗談を。
啓介はいいとしても、小野田が?
コイツ……魔術使うの滅茶苦茶下手くそやんけ!
「おいそこ……声に出てるぞ」
「あれ?隠すつもりもなかったけど、口に出してたみたいだな」
にしても、呼び方が明らかおかしいだろ。
ビーバー先輩にアゴ先輩って……って、あれ?
「意外と、違和感がない……」
「でしょ?私だって何も考えずに名前を考えたわけじゃないのよ。ちゃんと相手の特徴を読み取って、それからつけたんだから」
「人の観察をするのは別に構わないけど、せめてビーバーはやめてくれないか!?」
啓介が全力で拒否するも、刹那は呼び方を改める気はなさそうだ。
なんというか……啓介が哀れだ。
あっ、小野田は別な。
「……おい、そこ。今、お前は凄くぴったりだなとか思っただろ」
「ん?そうだけど」
「少しはフォローしようとかはないんですか……?」
春香がそんなことを呟く。
いやいや、そんな気は起きる筈がないだろ。
何せ、相手はやられ魔王だぞ?(晴信から聞いた)。
「ていうか、お前らはテスト無事だったんだな」
「世界史で地獄を味わったけど、なんとかなった……」
ほうほう……啓介は世界史が苦手なのか。
後でそのことについて追及するか。
「それじゃあ今日の部活を始めるけど……」
「対戦相手は、三矢谷瞬一で頼む」
「え~」
「え~じゃない!!」
面倒くさいやつだな、本当に……。
まぁいいや、いっちょ遊んでやるか。




