神山織との過去
「その話は本人から聞いたよ。それで瞬一、一体……」
「アイツはな、俺が中学に上がるまで同じ学校に通ってたんだよ。幼稚園も一緒、小学校も一緒」
隣の家だってこともあって、織と俺はいつも一緒に過ごしていた。
どこ行くにも、二人一緒で。
あの時は、本当に楽しかったなぁ。
「ところがな、ある日のことだった……俺はもちろん、織も自然魔術師だったんだ。しかも、小学生ながら、結構力が強かったんだよ……だから、アイツの親が勧めたことは」
「勧めたことは?」
「……海外留学だ」
そう言った経緯があって、織は海外留学するか。
俺と一緒に、雷山塚中学校に来るかで迷っていた。
だが、そんな迷いすらも一気に吹き飛ぶような事態が、発生したのだ。
それが……親の海外転勤。
「……」
「そうして織は外国へ行き、俺はこっちに残ったってわけさ。まぁ、アイツが日本にいる間にも、ちょっとした出来事があったんだけどな。それはまた別の話にするよ」
「そっか……そんな話があったんだ」
葵が、半ば呟くようにそう言った。
まぁ、暗い話でも何でもないんだけどな。
海外転勤なんて、よくある話……でもないか。
「じゃあ、神山織って言うのは……」
「ああ。俺の大事な親友の一人だ。もちろん、お前らを含めてな」
「おお……俺のことを親友と呼んでくれるのか」
「あ、お前はサーヴァントな」
「さ、サーヴァントって、何?」
「親友の呼び方の一種だ」
「いっやほ~い!!」
……駄目だコイツ。
マジで英語出来ないな。
ちなみに、サーヴァントって言うのは、召使いとかの意味を示す英単語である。
ターゲットにも載ってるから、今度調べてみるといいぞ。
ちなみに綴りは、『servant』な。
……型月作品に、そんな単語が出てきた作品もあったな。
「何ぶつぶつ言ってるのよ?」
「いやぁ、晴信の頭の愉快さに、つい、な」
……コイツは中学からやり直した方がいいと思う。
うん、絶対に。
「んで、今織はどこにいるんだ?」
「さぁ……そこまでは分からないけど。多分今度君を探すために学校に来ると思うよ」
「……は?まだ俺が帰ってきたこと言ってないの?」
……面倒くさいことになってきたぞ。
「うん。だってその日以降、僕達は会ってないからね」
「……ああ、ややこしいことになりそうだ」
アイツも葵と同じようなタイプ……いや、根本的な所では違うんだけど、結構感情表現豊かなタイプだからな。
喜怒哀楽が激しいというか……何というか。
「まぁ、織が来たら俺の顔を見せてやればいっか……」
にしても、アイツ。
こっちに帰ってきてたんだな……。
この一ヶ月で、随分と事が進んでいる気がするぜ。
久しぶりに二人でどこかに行くのもいいかもしれないな。
……ちったぁ成長したんだろうな、織。
「さぁて、勉強会の続きと行こうじゃないか。早くしないと、マジで英語で赤点を取りかねないぜ」
「あ、晴信は赤点確定よ」
「何だと北条……テメェ、俺が赤点取らなかったらどうするつもりだ?」
……無理だな、コイツは。
サーヴァントの意味を知らないといい。
『I』の次に続くBe動詞が『are』だったりと、かなり凡ミス&単語覚えていないという現実が待っているから、一夜漬けだけじゃ済まないと思うぞ、コイツの場合は。
「あ、あの……ここで喧嘩しては」
「空、止めなくていいぞ。むしろ無視しろ」
「で、でも……」
「放っておけば、あの二人の喧嘩はすぐに収まるよ」
「お、お姉ちゃんまで……」
さすがに姉である葵にまで言われてしまうと、言葉に詰まってしまう空。
まぁ、俺達は晴信と北条の喧嘩をバックBGMにしながら、その後も勉強を続けた……うるさいからもちっと静かにしろよ。
そんなこんながあって、俺は期末試験を何とか乗り越えられた。
他の奴らも、余裕の奴がいたり、普通の奴がいたり、ちょっと危ない橋を渡った奴もいたり……と様々な反応が返ってきたが、まぁ普通だったということだろう。
ちなみに、喧嘩していた北条と晴信だが。
北条の方が全然平気だったらしい。
だが、晴信の方は……英語で『○』をとってしまったらしい。




