理由
Side大和
昼休み。
僕と森谷は、学校の倉庫裏に来ていた。
森谷が、僕のことを呼んだためだ。
「ここならいいな」
「森谷……一体僕を呼び出したりしてどうしたんだい?」
来て早々、僕は森谷にそう尋ねる。
すると森谷は、
「……俺がこの学校に編入した理由、分かるか?」
「理由?分からないけど……『組織』の方からも何の連絡も聞いてないし」
「そりゃあそうだろう。俺のことなんて、『組織』の連中は気にしちゃいないよ」
なら、何で森谷はこの学校に編入してきたんだ?
何か目的があるとも考えにくいし……。
「俺がこの学校に編入した理由、それは……」
「それは……」
「……この学校で、最近不穏な動きが見え始めている」
「不穏な動き……うん。僕もこの一ヶ月間、何やら奇妙な感じを抱いてた」
それは間違いない。
最近この学校では、妙なことが起きているのも事実だ。
「ここ一ヶ月間で、通り魔事件が多発しているって話、聞いたことあるな?」
「聞いたこともあるも、僕はこの学校の生徒だからね。話聞く聞かない以前の問題だね」
通り魔事件。
それは、瞬一が行方不明になってから一週間が過ぎたその日より始まった。
雷山塚高等学校に通っている生徒が、何者かに突如襲われるという事件が発生したのだ。
その生徒は背中から刃物か何かで斬られていて、重傷を負った。
その後、一週間おきにその事件は続いていって。
これまでで三件発生している。
……犯人の手掛かりは、未だ掴めていない。
「俺はその話を『組織』から聞いて、思った。この事件、アイツが関わってるんじゃないかってな」
「アイツ……クリエイターのことだね」
確かに、クリエイターなら考えるようなことかもしれない。
しかし……。
「クリエイターの可能性は低いと思うよ」
「?どうしてだ?」
「クリエイターなら、もっと行動範囲を広く取るだろうし、第一、いくらなんでもこの学校は規模が小さすぎる。街単位ならまだしも、学校単位だなんて、危険にも程がある」
「……じゃあ、お前は誰が犯人だって言うんだ?」
「それは……分からない」
犯人が分かっているのなら、『組織』の人間としては、黙って見過ごすわけにはいかない。
しかるべき処置を、その人物にとらなければならないのだ。
「分からないけど、僕はこの学校の中に犯人がいると考えてるよ」
「この学校に……犯人が?」
「うん。それに、クリエイターは直接は関わってないだろうけど、もしかしたらどこかで繋がりがある危険性もある。だから、この事件は丁重に捜査を続けなければならないと思うよ」
「……」
そう。
この事件は……冷静に調べなければならない。
犯人を触発してしまったら……全生徒皆殺しという可能性も考えなくてはならなくなる。
それにこの事件、どこか怪しい部分も見える。
単なる快楽犯である可能性は……低い。
「計画的なものである……と考えてるのか?」
「……うん。決まった曜日にしか襲わないという点でも、ただの快楽犯とは違うと思うんだ」
「……他に何か分かったことがあったら、教えてくれ。俺も、何か分かったらお前に連絡する」
「分かった」
それだけを言うと、森谷は教室へと戻って行った。
けど、僕は少しの間その場に立ち止まっていた。
さっき僕は、内部の人間の犯行の可能性が高いと言った。
そして、今最も怪しい人物は……。
「由雪、迅……」
一か月前程前から行方不明になっている、由雪迅。
彼はこの事件に関わってるのか?
あるいは……巻き込まれたのか?
恐らく彼は、何かを知っているはずだ。
彼の捜索も、考えといた方がいいかもしれない……。
さてさて、次回からは「夏休みに入る」編に参ります。
……あれ、期末試験は?
ご安心を。
期末試験の話から始まりますので。
あ、気づけば本編150話超えてました……。




