我がクラスに転入生
葵も泣き止んで、担任が入ってきたところで、
「え~それでは今日は転入生を紹介するぞ~」
「転入生……」
うん、身に覚えがありまくりで困るぜ。
参ったな、高い確率でアイツだよな……。
「男か?それとも女か!?」
「男だ」
「「「「「あ~あ」」」」」
男子生徒達の落胆の声が聞こえてくる。
……ここ、S組だよな?
どこのクラスでも、男子ってのはこういう奴らなのだろうか。
「どんな人ですか?」
「それは見てのお楽しみだ。というわけで、早速入ってもらうか」
そう言うと、担任は扉に向かって歩き出し、扉をかるく開き、外にいるだろう転入生に向かって何かを話す。
しばらくして、
そしてスコチ経ったらすぐに戻って来て、言った。
「というわけで、転入生に入ってきてもらおう。入ってきてくれ!」
扉の外に向かって、担任はそう告げた。
すると、
「……やっぱりか」
およそ予想通りの人物が、教室に入って来た。
グレーの髪、縁なしの眼鏡。
その人物の名前は……。
「森谷?!」
「……え?」
大和が驚いたような声を出したのは珍しいな……。
あ、そういえばコイツ、確か大和の古い時からの友人だって言ってたな。
晴信が言ってたことを忘れる所だったぜ。
「というわけで、今日からこのクラスに編入することになった、森谷大地だ。森谷、早速自己紹介してくれ」
「はい」
大地は担任の言葉に答えると、
「今日からこのクラスに編入することになりました、森谷大地です。前にここに来た時は、『学校破り』ということで来て、みんなに迷惑をかけたと思います」
「いや、むしろ面白かったぜ?お前と大和の勝負」
「ですね。お二人共強かったですし」
大地の言葉に、晴信と春香の二人が言う。
ああ……見たかったなぁ、二人の戦い。
「そして、小野田は出落ちだったわね……」
「そ、それは言わないお約束だよ……」
北条が何やらそんなことを言って、葵が困ったような表情を見せながらそんなことを言った。
ちなみに、北条も下の名前で呼んだ方がいいかなと思って呼んでみた所、
「やめてよ。私の下の名前を言っていいのは、私の家族と大和君だけよ(`ヘ´)」
「……分かったよ」
顔文字つきで言葉が返ってきたので、北条は今まで通りに呼ぶことにした。
大和は……なんとなく名字呼びの方がしっくりくるので、今まで通り『大和』でいくことにした。
「これからは、共に勉学および部活動に励むことになると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
そう言ってから、大地は一礼。
すると、
「よろしくな、森谷!」
「一緒に期末試験頑張ろうね!」
など、歓迎の声がわきあがってきた。
……そう言えば、期末試験が近かったんだっけか。
「一ヶ月休んでたから、授業が全然分からない……」
致命的なミスだ……。
ていうか、半分以上俺の意思じゃないのに……なんて理不尽な仕打ちなんだ。
「そういうわけだ。とりあえず森谷は……そこの席が開いてるな。よし、そこの席に座れ」
「……ん?あそこって確か……由雪の席じゃなかったか?」
開いてる席なんてうちの教室にはなくて、あそこは確か由雪迅の席だったはず。
「……お前が居なくなった一週間後にな、由雪迅が学校に来なくなったんだよ」
「学校に来なくなった?」
……また何か嫌な予感がする。
そんな不安に縛られながらも、俺はカバンから今日の授業の準備をする。
……あ、教科書忘れた。
「後で話がある。来てくれるか?」
「……ああ」
「……ん?」
大地が、大和の席を通り過ぎる時に、そんなことを言ったような気がしたけど……気のせいかね。




