思わぬ再会
校長室を出た後一旦職員室に行き、先生達からの様々な言葉を受け取った後に、俺は教室に向かった。
途中、廊下でとある人物とすれ違った。
「……瞬一!!」
「ん?その声は……佐々木か!」
その人物は、小山先輩と一緒に歩いている、佐々木だった。
俺を見て、かなり驚愕の表情を見せた。
「今までどこ行ってたんだよ瞬一!行方不明だって聞いてから、かなり心配してたんだぞ!」
「ああ……いろいろあってな。心配させて悪かった。それと、心配してくれてありがとな」
「え……ああ、おう」
佐々木は、若干顔を赤くして、声を小さくする。
恥ずかしがりやがってこの野郎。
「あなたが……三矢谷瞬一君?」
「え?はい、そうですけど……」
まさか小山先輩が俺に話しかけてくるなんて思ってもいなかったから、俺は即座に敬語に切り替える。
「ふ~む……見た目に問題はなさそうね。あなた、結構お人好し?」
「お人好しかどうかは知りませんが……一応困ってる人は助けるようにしてますけど」
「ふぅ~ん……なるほどね」
意味深な笑みを浮かべながら、小山先輩はそんなことを言ってきた。
……何、この笑みは。
「ち、千里?」
段々佐々木が焦ったような表情を浮かべていた。
……やっぱりコイツ、小山先輩のことが好きなんだろうな、うん。
「……じゃあ、そろそろ行こっか?自分達の教室へ」
「そ、そうだな……それじゃあ瞬一も頑張れよ」
「何をだよ……」
何かよく分からないようなことを言ってくる佐々木は、そのまま小山先輩と共に教室へ向かおうとする。
その去り際に俺は、
「またな、啓介!」
「!?……おう!!」
一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに笑顔で言葉を返してくれた。
さて……行くか。
俺の教室へ……二年S組へ。
Side晴信
……今日も学校の日がやってきた。
未だに俺達の教室には、一つ空白の席が残っている。
瞬一は未だに、学校に来ていない。
「……」
他の生徒が多少談笑している声が聞こえてくる。
しかし、俺達の周りだけは空気が重かった。
葵の目には光が宿っておらず、笑顔が消えた。
一之瀬の方は多少マシな方で、以前よりも減ったが、笑う機会が多少ある。
ところが、前よりも人見知りになってしまった。
……瞬一がいなくなった影響と言うのは、デカイものだな。
かくいう俺も、瞬一がいなくなってから、ポッカリと穴が空いてしまった感覚があった。
「……なぁ、葵」
「……?」
「……なんでもない。呼んでみただけだ」
くそ……話しかけずらい。
感情表現がない人形みたいに、葵が無表情になっている。
このままの状態が続いてしまうと……葵は。
「……ところでみんな。昨日僕が話した内容だけど」
「ああ。確か瞬一の幼馴染みとかいう少年だっけ?名前は……」
「……神山織じゃないですか?」
「うん、あってるよ」
神山織か……。
……『式』って感じだったら、もうヤンデレになってただろうな。
「それで?その少年も、一緒に瞬一を探したいと?」
「うん。よっぽどショックを受けていたからね……」
「……外国から帰ってきて、瞬一君がいないことを聞いて、ショックを受けるのは当然ですよ……」
「一之瀬……」
「これも、私が……」
「やめろ。それだけは言うな」
自分を責めそうになった一之瀬を、俺は止める。
……早く帰ってこいよ、瞬一。
お前、本当は生きてんだろ?
「生きてんだったら……さっさとその面俺達の前で見せてみろよ!!」
「うっせぇな。叫ばなくても教室に入るっての」




