新たなる出会い
いやぁ、俺の中では一日しか経っていないと言うのに、随分熱くなったものだな。
体に直接突き刺さってくるかのような日射しだぜ、まったく。
明日からは夏服着ていくしかないな、こりゃ。
なんでいつもの学ラン着てきたんだろうな……。
「半袖のワイシャツが恋しくなってきたぜ……」
いきなりの気候の変化は、体に堪えるぜ……。
全身から水分が吸いとられていくような気分だ……。
早くも寮に帰りたくなってきたその時だった。
「……ちょっといいか?」
「うん?」
グレーの髪の毛、フチナシの眼鏡をかけた男子生徒が声をかけてきた。
……誰だコイツ?
少なくとも俺は見たことのない奴だな。
学年は……襟章の色が赤ということは。
「お前、俺と同じ二年生か?」
「ああ……そうだけど」
……ますます見たことがないな。
一年生なら、なんだ新入生かで済むのだが、流石に同じ学年と言うと、何で見たことないんだ?
「ああ。俺のことは知らなくて当然だ。なにせ俺は、今日からこの学校に通うことになったんだから」
……男子の転入生か。
しかも、顔はそこまで悪くないから、話題性と重なって結構モテるだろうな。
……俺も大和とかみたいにモテてみたいものだ。
「転入生か……それで見覚えのない顔だなとか思ったのか」
「ところで……職員室って何処だ?」
「ああ、クラスのこととかを聞きに行くのか……いいぜ。途中まで一緒に着いていってやるぜ」
「本当か?」
「ああ。俺もちょうど用があったところだからな」
何せ、帰って来たことを報告しなければならないからな。
不本意とは言え、一ヶ月は失踪してたわけだからな。
最も、もしモテラスに助けてもらってなかったら、俺はあのまま死んでいた可能性もあったわけだしな。
「んじゃ、早速職員室に行くとするか……と、その前に」
「うん?」
職員室に行こうと進めていた足を止めて、俺は相手と向かい合わせになる形をとる。
それが何を意味するのかを理解していなかったらしく、 目の前にいる男子生徒はキョトンとした表情を俺に見せてくれた。
「ほら、何ボサッとしてんだよ。名前だよ、名前」
「名前……ああ!自己紹介のことか!」
ようやっと気付いたらしい。
もう頼むぜ……おい。
「俺の名前は森谷大地」
「俺は三矢谷瞬一だ……って、今森谷大地って言ったか?」
「ああ、言ったけど」
……もしかして。
コイツが、あの日晴信が言ってた、
「お前が……学校破りか?」
「……そんな名前で呼ばれたこともあるな」
やっぱりか。
聞き覚えのある名前だと思ったら、そう言うことか。
確か、大和の中学の時の同級生だって言ってたな。
「そうかお前が噂の……」
「なんだ?俺のことはそこまで噂になってるのか?」
「いや、俺も人から聞いたからどのくらいか知らないけどよ」
何でそのタイミングで俺は入院なんかしてたんだよ、マジで。
……クリエイターめ、ゆるせないな(自分でも思ったが、結構理不尽な怒りだよな)。
「まぁ、何がともあれ同じ学年なんだから、同じクラスになる可能性もあるということだ。とりあえず、これからもよろしくな」
言って、俺は右手を差し出す。
大地は、どうしたらいいのか迷っていた。
「いや、握手だよ」
「……ああ」
ギュッと、大地は俺の右手を握り返す。
そして、
「こちらこそ、よろしくな」
「ああ!」
そう挨拶を交わした後、俺と大地は、職員室へ向かった。




