動きの朝
Side大和
瞬一を探しにこの学校に来たとは……。
この少年……いや、少女?
風貌からでは分からない、この人物は、瞬一の知り合いか何かかな?
……『僕』と言っていたし、少年ということで間違いないと思うけど。
「……」
今、目の前の少年は、僕から告げられた真実を聞いて茫然としていた。
……ここにも、瞬一の影響が行きとどいていたとは。
一体、瞬一とはどういう間柄なのだろうか?
「失礼だけど……君と瞬一は、どういう間柄なんだい?」
「……小さい頃からの、幼馴染」
「……小学校までは一緒だったんだ。でも、中学高校は別だったんだ」
「……六年生の時に、海外留学したから、それきり、連絡は……」
そうか……この子は帰国子女だってわけだ。
「なるほど……」
「……瞬一君は、いつから行方不明なの?」
「……一か月前から。六月四日から行方が分かっていないんだ」
「……」
悲しそうな表情を浮かべる少年。
……僕達も今日まで瞬一のことを探してきたが、そろそろ精神の方が限界にまで達してきているようだ。
僕と晴信、真理亜の三人はまだ大丈夫だけど。
問題は……春香と、葵だ。
特に葵の変化はひどかった。
瞬一がいなくなった次の日に欠席したかと思うと、その次の日に学校に来た時は……春香以上に感情がなくなっていた。
……瞳の中に光が宿っていないなんてものじゃない。
春香は日にちが経つにつれて、少しずつであるが笑顔を取り戻してきている。
けど……葵の場合は、完全に笑わなくなっていた。
……そして、目の前にいる少年もまた、その事実を聞いたことによって泣きそうになっている。
罪つくりだね……瞬一。
「……なら、僕達と探すかい?」
「え?」
未だ涙は止まっていないが。
少年はハッと僕の方を見た。
その様子を一瞥してから、僕は言葉を続ける。
「多分だけど、君はこの学校に転入する……違うかい?」
「……うん。九月にはこの学校に転入する予定だけど」
「なら、それまでに瞬一が見つかるように、一緒に探そうよ」
「……」
少年は、少し考えるような素振りを見せる。
それから……。
「……うん」
一言、肯定の意を示す言葉を述べてから、首を縦に頷かせた。
「よし。そうときまれば、まずは君の名前を聞いておくことにするか。僕の名前は大和翔。君は?」
名前で呼び合わないのも不自然だから。
僕は少年に名前を尋ねることにした。
すると少年は、
「……僕の名前は、神山織」
「神山織、か……じゃあ織って呼ぶことにするよ」
こうして、僕と少年―――織は出会ったのだった。
朝になった。
ほぼ丸一日眠ったようなものだから、体調は完全に回復している。
そして、現在時刻……。
『AM05:59』。
「よし、全然間に合うな」
まずは制服に着替えてっと……。
続いて今日の授業の準備をして。
それから髪の毛とかを整えて。
「あ、朝食か……今日はパンでいいや」
パンを皿の上に乗せて、
「えいっ」
ボウッ。
そんな音がして、パンがいい具合に焼けた。
……久しぶりの静かな朝だ。
こんな日はもうそんなにないだろうから、今のうちに堪能しておくか。
「コーヒーを入れて……よしっ」
パンにコーヒー。
う~ん、なんて欧米風な朝食(かどうか分からないけど)。
「頂きます」
折角なので、この静かな朝をたっぷり堪能することにして、朝食はゆっくり食べた。
……パン、裏面が凄いことになってる。
「うげ……折角の静かな朝が……」
口の中に広がる焦げっぽい味が、俺の朝を多少壊した。
まぁ、そのくらいの無礼、今日は許してやろう。
……誰の無礼だよ。
「パンの?……まぁいいや。早く食って学校行こう。試験が近いのもあるしな」
焦げたパンを勢いよくコーヒーで流し込んで、皿洗いは別に後でもいいかと考える。
そして俺は、カバンを左手で持ち、
「それじゃあ……行ってくっか」
寮の部屋の鍵を出て、学校へ向かった。
……教室内の様子はどうなってんだろう。
あけましておめでとうございます!
2010年1月1日、最初の投稿でございます!
これからもよろしくお願いします!!




