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Magicians Circle  作者: ransu521
神山織編
150/309

動きの朝

Side大和


瞬一を探しにこの学校に来たとは……。

この少年……いや、少女?

風貌からでは分からない、この人物は、瞬一の知り合いか何かかな?

……『僕』と言っていたし、少年ということで間違いないと思うけど。


「……」


今、目の前の少年は、僕から告げられた真実を聞いて茫然としていた。

……ここにも、瞬一の影響が行きとどいていたとは。

一体、瞬一とはどういう間柄なのだろうか?


「失礼だけど……君と瞬一は、どういう間柄なんだい?」

「……小さい頃からの、幼馴染」

「……小学校までは一緒だったんだ。でも、中学高校は別だったんだ」

「……六年生の時に、海外留学したから、それきり、連絡は……」


そうか……この子は帰国子女だってわけだ。


「なるほど……」

「……瞬一君は、いつから行方不明なの?」

「……一か月前から。六月四日から行方が分かっていないんだ」

「……」


悲しそうな表情を浮かべる少年。

……僕達も今日まで瞬一のことを探してきたが、そろそろ精神の方が限界にまで達してきているようだ。

僕と晴信、真理亜の三人はまだ大丈夫だけど。

問題は……春香と、葵だ。

特に葵の変化はひどかった。

瞬一がいなくなった次の日に欠席したかと思うと、その次の日に学校に来た時は……春香以上に感情がなくなっていた。

……瞳の中に光が宿っていないなんてものじゃない。

春香は日にちが経つにつれて、少しずつであるが笑顔を取り戻してきている。

けど……葵の場合は、完全に笑わなくなっていた。

……そして、目の前にいる少年もまた、その事実を聞いたことによって泣きそうになっている。

罪つくりだね……瞬一。


「……なら、僕達と探すかい?」

「え?」


未だ涙は止まっていないが。

少年はハッと僕の方を見た。

その様子を一瞥してから、僕は言葉を続ける。


「多分だけど、君はこの学校に転入する……違うかい?」

「……うん。九月にはこの学校に転入する予定だけど」

「なら、それまでに瞬一が見つかるように、一緒に探そうよ」

「……」


少年は、少し考えるような素振りを見せる。

それから……。


「……うん」


一言、肯定の意を示す言葉を述べてから、首を縦に頷かせた。


「よし。そうときまれば、まずは君の名前を聞いておくことにするか。僕の名前は大和翔。君は?」


名前で呼び合わないのも不自然だから。

僕は少年に名前を尋ねることにした。

すると少年は、


「……僕の名前は、神山織」

「神山織、か……じゃあ織って呼ぶことにするよ」


こうして、僕と少年―――織は出会ったのだった。















朝になった。

ほぼ丸一日眠ったようなものだから、体調は完全に回復している。

そして、現在時刻……。

『AM05:59』。


「よし、全然間に合うな」


まずは制服に着替えてっと……。

続いて今日の授業の準備をして。

それから髪の毛とかを整えて。


「あ、朝食か……今日はパンでいいや」


パンを皿の上に乗せて、


「えいっ」


ボウッ。

そんな音がして、パンがいい具合に焼けた。

……久しぶりの静かな朝だ。

こんな日はもうそんなにないだろうから、今のうちに堪能しておくか。


「コーヒーを入れて……よしっ」


パンにコーヒー。

う~ん、なんて欧米風な朝食(かどうか分からないけど)。


「頂きます」


折角なので、この静かな朝をたっぷり堪能することにして、朝食はゆっくり食べた。

……パン、裏面が凄いことになってる。


「うげ……折角の静かな朝が……」


口の中に広がる焦げっぽい味が、俺の朝を多少壊した。

まぁ、そのくらいの無礼、今日は許してやろう。

……誰の無礼だよ。


「パンの?……まぁいいや。早く食って学校行こう。試験が近いのもあるしな」


焦げたパンを勢いよくコーヒーで流し込んで、皿洗いは別に後でもいいかと考える。

そして俺は、カバンを左手で持ち、


「それじゃあ……行ってくっか」


寮の部屋の鍵を出て、学校へ向かった。

……教室内の様子はどうなってんだろう。
















あけましておめでとうございます!

2010年1月1日、最初の投稿でございます!

これからもよろしくお願いします!!

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