浄化の光、彼の者を包み込まん
「彼の者達の命を、奈落の底へ誘え!!ダークネススピア!!」
瞬間。
多くの魔法陣が展開し、そこから黒い小さなドリルがいくつも飛び出してきた。
「散れ!!」
そのドリルは、瞬一達めがけて飛んできた。
「お前ら、一斉にここからバラバラに移動するぞ」
「……」
コクッ。
将吾の言葉に、一同が頷く。
「行くぞ……」
「「「「「「「「「「「「せ~の!!」」」」」」」」」」」」
ドリルが一か所に集中したところで、瞬一達はそれぞれバラバラに散る。
そして、
「俺達が持ってる最大の力で、アムステルダムを倒すんだ!!」
「まずは俺からだ……行くぞ、アムステルダム!!」
言いながら、将吾は己の刀を抜き、
「む……そんな刀一本で、何が出来るというのかね?」
「見せてやるよ……モテラスの力の一部を借りた俺達の、最強の力を!!」
シュン。
そんな効果音が聞こえたかと思うと、将吾はその場から消えた。
「なっ……消え去っただと!?」
「目にもとまらぬ速さで……貴様の身を八つ裂きにする!!」
将吾は、自分の中でのトップスピードで、相手の体を斬る―――!!
アムステルダムに、逃げる隙も与えない!!
「これぞ俺の奥義、雷鳴瞬光斬!!」
斬り終わりと共に、アムステルダムの体に雷撃が与えられる。
「ぐはっ!……だが、まだだ。その程度では、私は倒れぬ……」
「次は私よ……最大出力で、アムステルダム、貴方を撃つ!!」
麻美は、己の力のすべてを銃に注ぎ、それを銃弾にしてアムステルダムに撃つ!!
「が……は……」
「まだまだだ!」
苦しみだすアムステルダムに、第三陣として亮介・美姫・ミーニャの三人が駆けてきた。
三人は、アムステルダムの三方に散ると、右手で思い切りアムステルダムのことを殴った。
いままでのものとは比にならないほど、最大の力で。
「次行くぞ!……これが、俺の出せる限界だ!!」
ポケットの中から金属の棒を何本も取り出して、それを竜平はアムステルダムにすべて転移させていく。
「ぐっ……いっつ!!」
「刺しっぱなしは痛いだろうからな。抜いてやるよ」
「ぐはぁっ!」
刺された金属の棒は、しばらく刺さったままだったが、すぐさま抜かれる。
それと同時に、アムステルダムには尋常じゃないほどの痛みが襲う!!
「次よ!喰らいなさい!!」
綾音は、体術で勝負を仕掛ける。
殴り、殴り、蹴る―――!!
人間とは思えない程の速さで、どんどん相手にダメージを与えていく―――!!
「綾音、俺が続く!!」
「分かったわ!」
続いて、短刀を手にした深夜が、先ほどの将吾よりもさらに速いスピードでアムステルダムに近づき、
「俊足に、追いつけるか!!」
ズバズバズバズバ!!
高速でアムステルダムの体を斬り裂いていく。
「がはっ!」
さすがのアムステルダムも、口から血を吐いた。
容赦ない攻撃である。
「次……私が行くわ」
今までよりも数多い武器……手裏剣らしきものを創り出して、それをすべて投げた。
……それらすべては、アムステルダムの体を切り裂いた。
「ぐぉっ!」
もうアムステルダムは、ダメージを受けすぎていて、立っているのもやっとの状態のようにも見えた。
……それが演技である可能性も否定は出来なかったのだが。
「……次は俺だ。覚悟しろ、アムステルダム!」
両手を挙げて、直行は何かを呟く。
瞬間、頭上に炎の塊みたいなものが出来上がった。
ただし、その炎には何故か雷みたいなものが帯せられていた。
「……炎に、雷だと?」
「これが俺の能力だ……いくつもの能力を組み合わせて、それらを行使することで、様々な攻撃を繰り出すことが出来るんだよ!」
直行が叫んだ次の瞬間、頭上に浮かび上がっていた炎は、すべてアムステルダムめがけて飛んだ……!!
「あっつい!!」
「うわぁ……」
そのあまりの凄さに、一同も驚きの声をあげずにはいられなかった。
だからと言って、攻撃の手は緩まない。
「次は俺の番だ……!!」
瞬一は、その場に立ち、呪文を詠唱し始める。
「我に抗う者に、神より賜りし聖なる矢にて、彼の者に静かなる苦しみを与える!!」
瞬一の立っている場所には、魔法陣が現れる。
そして、次の瞬間には、そこから光が発せられて、弓と矢が共に、瞬一の前に現れた。
瞬一は、それらを握ると、弓を撃つ構えをとる。
「喰らえ……スパークロア!!」
ビュッ!
瞬一から放たれた弓矢は、アムステルダムの心臓より右側の部分を突き刺す。
そして、そこから浴びせられる、電撃。
「ぐはっ!」
「私の番ね……悪に染まりし心よ。浄化の光にてその悪を滅せよ!シャインウェーブ!!」
里美がそう詠唱した瞬間。
辺りに光の波らしきものが現れ、アムステルダムを覆う。
そして、それは段々とアムステルダムに近づいていき、
「ぐぅっ!」
最後には、アムステルダムの体を締め上げる結果となった。
「みんな、最後の締めだ……これで終わらせるぞ!!」
瞬一の言葉に頷くように、一同は一か所に集まる。
そして、自分の右手を突き出して、
「「「「「「「「「「「「覚悟しろ、アムステルダム!!」」」」」」」」」」」」
瞬間。
彼ら十二人の前に、魔法陣らしきものが出来上がる。
そこから発せられるのは、モテラスの物と同じ光だ。
「ちっ……鮮血と共に散れ、ブラッティスピア!!」
「「「「「「「「「「「「ラストストライク!!」」」」」」」」」」」」
アムステルダムが術を発動させるよりも先に、瞬一達はモテラスの力を最大限まで使い、その技を発動していた。
魔法陣から発せられる強烈な光の筋は、アムステルダムの体を確実に射抜いていた。
それはまさしく、浄化の光。
先ほどの里美の使用した魔術の光よりも、遥かにまぶしい光。
光によって、闇は打ち消される。
モテラスの力は、闇の存在を打ち消すのに十分すぎる程のものであった。
「こんな奴らに……この私が負けるとは……無念」
アムステルダムは、その光に包まれたまま、その場から存在が消え去った。
つまり、瞬一達は、この世界を救うことが出来たということだ。
「お、終わった……のか?」
「……みたいだ。アムステルダムも消え去ったみたいだし、これで、ゆっくり、休める……」
バタン。
先ほどの攻撃の影響あってか。
十二人全員が、その場に倒れこんだ。




