決戦、開始
「はぁっ!」
モテラスは、己の力を最大限に利用して、アムステルダムの懐に飛び込む。
だが、アムステルダムも、その攻撃を安易に受ける程愚かではなかった。
「ふん!」
キュオ、という謎の音が響く。
同時に、アムステルダムの前に展開する、魔法陣。
そこから、謎の黒い線らしきものが、放出される。
だが、
「その攻撃は……効きません!」
カッ!
ネックレスから発せられる光によって、その攻撃は打ち消された。
「な、何!?」
さすがにこれには、アムステルダムも驚きを隠せない。
それは、瞬一達とて同じことだった。
「ハァッ!」
このチャンスを使い、アムステルダムは一気に畳みかかろうとする。
だが、その間にも……。
「!!モテラス、後ろだ!!」
「え?」
振りむいた時にはもう遅い。
そこには、今にもモテラスを攻撃しようとしている影の姿があった。
右手には、剣が握られている。
「ま、麻美、銃だ!!」
「う、うん!」
慌てて麻美は銃を構える。
狙うは、影の体―――!!
ダァン!
一発の銃声が、部屋に響き渡る。
そしてその銃弾は、影に命中する。
すると、跡形もなくその影は消えていった。
この短い時間の間に、アムステルダムは、モテラスと距離を取っていた。
「そろそろ時間だな……窯の中より出でよ、私のしもべ達よ!!」
「窯……!!」
深夜がそう呟いたその瞬間の話だった。
何と、窯の中から次々と影がわき出してきたのだ。
その数……今までの数とは全然格が違うものであった。
「な、何だよコイツら……今までの影は、全部ここで練成されていたってわけかよ!」
「その通りだ。そして、窯がある限り、私のしもべ達はほぼ無限に練成することになる……彼の者達を、討て!!」
アムステルダムがそう叫ぶと同時に、瞬一達に向かって一斉に影の軍勢が襲いかかってくる。
「ちっ!コイツら全員を相手にしなきゃなんないのかよ!」
「モテラスの援護をするぞ!影は俺達の手で何とかしろ!倒しきったら、モテラスと一緒にアムステルダムを討つんだ!!」
深夜が叫ぶ。
それに答えるように、一同は影に向かって走り出す。
「せいっ!」
「はぁっ!」
「ふんっ!」
亮介・美姫・ミーニャの三人は、己の力が武器なので、力一杯に相手を殴り、
「見切れるか!雷撃斬!」
将吾は、一風変わった剣劇で相手を翻弄する。
鞘に収まっていた刀を敵の目の前で一気に引き抜き、まるで居合いみたいな攻撃を繰り出した。
「逃さない!スプラッシュ!」
里美は魔術で生み出した水の泡を、敵の頭上で破裂させる。
その泡は、影を包みこみ、やがて影は消え去った。
「ちょこまかとうぜぇんだよ!!」
直行は、四方から殴りかかってくる敵にウザさを感じつつ。
自分の周囲に、水の壁を発動させる。
しかも、その壁を殴った影は、何故か感電して消え去っていった。
「……複数の能力を組み合わせて使用する……あれが、複数回路」
竜平はそんなことを呟いていた。
「ちょっと竜平、前、前!」
「ん?おっと!」
綾音の叫び声を聞いた竜平は。
攻撃してきた影を軽く避けて、
「コイツをお見舞いしてやるよ!」
右手をポケットの中に突っ込んで、何かを取り出す。
それは鉄の棒であり、次の瞬間。
その鉄の棒は竜平の手の中からすっかり消え去り、
「……!!」
一体の影の中に打ち込まれ、その影は消え去る。
「それもう一丁!」
影が消えたことで、重力に逆らうことなく落ちていく鉄の棒を、もう一度竜平は別の影に打ち込む。
ただし、今回は鉄の棒に手を触れずに、だ。
「……創造、開始」
そう言って美紀が創造したのは、短刀と銃だった。
「サンキュ!」
ダッ!
深夜は人間とは思えないスピードで部屋の中を駆け回る。
そして、影の体を次々と斬り裂いていく。
スピードが加わったその攻撃は、いとも簡単に影を斬り裂いていた。
「そこっ!」
「……!!」
美紀は、自分で創造した銃を。
麻美は、自らの武器である銃を使用し、相手の体を撃ち抜いていく。
時折迫る影の攻撃を体をひねらせて避け、そしてその影に銃弾を撃ち込む。
「聖なる雷よ。我の両手にその力の一部を宿せ!!」
そして瞬一は、両手に雷撃を帯びせ、それを影に向かって放出していく。
それは影を打ち消すと同時に、後ろに貫通していく。
縦に攻撃することで、およそ4体は一気に倒した計算となる。
「ちっ……数が多いな!」
「そんな攻撃で、私のしもべ達をすべて消せると思う出ないぞ!……ほっ」
愉快そうに笑うアムステルダムに、モテラスは攻撃を仕掛けたのだが、それはいとも簡単に避けられてしまった。
「……みなさん、窯です!窯を壊してください!!」
「窯……」
モテラスの叫び声を聞いた一同は、一斉に窯を見る。
そう言えば、と一同は頭の中で考える。
そして……気付いたのだ!!
「そうか!影があそこから出ているということは、窯本体を壊せば出なくなる!!」
「……麻美、あれを銃で撃て!!」
「分かった!」
『マミ、あれを撃ち抜くには少しばかり力を加える必要があるぞ』
「大丈夫……力はまだ残るから、多分」
ガンダーラの言葉を受けて、麻美はそう言葉を返す。
そして、
「壊れて……しまえ!!」
ダァン!
麻美の中で恐らくは一番強力な一撃が、銃より撃たれた。




