秘めるのは固い決意
数多ある世界の終焉?
それってつまり、全世界を崩壊させるって意味じゃねぇのか!?
「そんなことさせてたまるかよ……俺達の手で、お前の野望を何としても打ち砕いてみせる!!」
「おや……貴様らが倒すべき相手は私ではないぞ?」
「……え?」
倒すべき相手が、アムステルダムではない?
何をふざけたこと言ってるんだ?
コイツは、この世界を破滅させようとしている張本人であり、元凶で……いや、違う。
元凶は、コイツ以外の誰かだと、アムステルダムは言った。
なら、それは誰なのか?
「……街でお前は聞いたらしいな。この城のあの城は、元々建てられたものじゃないと」
「……ああ。それは間違いないな」
けど、それをアムステルダムは、何故知ってる?
「ナイトは、俺がこの世界に呼んだのだからな。当然と言えば当然だろうな」
「な、何!?」
ナイトが、アムステルダムに連れてこられた存在だったのか!?
……ならナイトは、こんなやつを尊敬しているというのか?
……そう言えば、ナイトは『この世界の誰かに』って言ってたな。
ということは……アムステルダムのことを知らなかった?
「ところが、私が姿を現さなかったのも原因となってか、私の作戦を自然と妨害するようになった」
「……妨害?」
「私が作り出した影達を、次々に壊し始めたのだ」
……そう言えば言っていた。
街の人達を襲う影を倒すのが、今の仕事だと。
「私の計画の一部としてナイトをこの世界に呼んだというのに……やつは使い物にならなくなったから、そのまま放置することになった。力は強かったというのに、もったいないことをしたと思う」
「……」
他の人達は、さっきから何を言ってるんだって顔をしてる。
それもそうだろう……ナイトの存在を知っているのは、俺だけなのだから。
「だが、計画の上では邪魔だった。だから結果的には、捨てたのは正解だったようだな」
「……」
黙ってるしかなかった。
これ以上、俺からは何も言えなかった。
コイツの配下にいるよりは、今のないとの方が幸せだと思ったからだ。
「それで、元凶がお前じゃないというのはどういう意味なんだ?」
「まだ分からぬか?もとよりなかった城が、二つも出来たと聞いたのだろう?」
「……ああ」
「つまりは……そこにいるモテラスもまた、私の計画の参加者……いや、この計画の提唱者は、モテラス本人なのだよ」
「「「「「「「「「「「なっ……!!」」」」」」」」」」」」
俺達全員の声が重なる。
それだけ、衝撃が大きかったのだ。
モテラスが……この事件の首謀者だと!?
「……」
当の本人であるモテラスは、黙ったままだ。
「……本当なのか?モテラス」
将吾が尋ねる。
すると、モテラスは、黙って首を縦に頷かせた。
「そんな……」
「モテラスが、この事件の首謀者……」
里美と麻美が、ショックを受けたような声色で、そう呟く。
……マジかよ。
こんな近くに、居たとは……。
……いや、コイツが敵だとは正直考えにくい。
「確かに、この計画自体を考えたのは僕です。でも、途中で気付きました!こんなことは間違っている……こんなやり方で世界を滅ぼしたって、結局はまたもとの道をたどってしまうだけだと!だから僕は抜けて、お前を止めることにしたのです、アムステルダム!!」
「……よかろう。ならば、私が相手になってしんぜよう」
「モテラス……」
決意を秘めた瞳をしていた。
それだけ、モテラスの決意は、固かった。
……計画を立てたのは、モテラスだったのは事実だったけど。
その途中で、モテラスは間違いに気付いた。
ならば、モテラスは敵じゃない。
「みなさんは下がっていてください……まずは僕が、アムステルダムと戦います」
「……」
一同は、反論しない。
もちろん、俺もだ。
しないのではなく……『出来ない』のだがな。
「……行きますよ!!」
モテラスは、右足で思い切り地面を蹴り、アムステルダムめがけて駆けて行った。




