元凶
Side里美
私達が階段を頼りにどんどん上の階へあがっていくと、その内階段が途切れたことに気付いた。
すなわち、ここが最上階……。
「ここまで部屋という部屋はほとんどなかった……なら、ここが最上階の可能性が高い」
「そして、アムステルダムがいる可能性も……ね」
私は、一気に気が引き締まるのを感じた。
この先に、アムステルダムが……。
この世界……島を壊そうとしている、元凶が。
「……私達の世界を守るためにも、何としてもアムステルダムを、倒しましょう」
「……はい」
美姫の言葉に、モテラスが頷く。
その表情は、ただ世界を破滅に向かわせようとしている元凶を倒しに行くものとは少し違う。
何というか、自分を取り巻く因縁を、断ち切ろうとする眼差し……そんな感じがした。
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない!」
私は、元居た世界に帰る為に……あ、元居た世界っていうと、今はちょっとニュアンスが違ってくるのか。
今の私の、帰るべき場所に帰る為に……将吾と一緒に帰る為にも。
アムステルダムを倒して、この世界を平和に導くんだ!
私一人の力じゃどうにもならないけど……私達全員が力を合わせれば、絶対勝てる!
相手が一人なのに対して、こっちは十三人。
人数的にも、こっちの方が上!
「……よし、開けるぞ」
「「「「……」」」」
亮介の言葉に、私を含む四人が頷く。
そして私達は、その部屋の中に入った。
Side竜平
「おわぁ……」
中に入ると、真っ暗だった。
恐らく最上階だと思われる場所への入り口から入ってきたけど、全然前が見えない。
暗順応が働かない限り、しばらくの間俺達の目は不自由な状態となるわけだ。
「う~ん……前が見えないわね」
塚本は塚本で、何やら手を空中で揺らしている。
……壁でも探しているのだおる。
と、その時だった。
ガチャリ、という音がして、どこかの扉が開いた。
……一か所、いや。
ガチャッ。もう一か所、扉が開かれる音がする。
と、言うことは……。
「……瞬一達か?」
「あ?その声は……竜平か?」
やはり。
その声は瞬一だ。
ひょっとしたら……。
「あ、柴倉!」
「将吾じゃない!!」
……やっぱりみんなと合流したみたいだな。
ということは、これで十三人全員が、この部屋に来たことになるな。
見た感じ、この部屋以降どこかに扉がある様子はない。
ということは……正真正銘ここが最終部屋というわけか。
「……気を抜くなよ。敵はいつどこに現れるか分からないからな」
「今ここに、貴様らの前に現れてくるがね?」
「なっ……!?」
どこから声がした!?
こんな暗い部屋じゃ、まったく姿が確認出来ない!!
「見えぬか……なら、姿を現せてしんぜよう」
ボゥッと、その部屋に立てかけられていた松明に火がつく。
さっきまでは蛍光灯とかだったのに、この部屋だけ松明だ。
……目の前に置かれていたのは、窯みたいな物だった。
そして、それを挟んだ先に……。
「……お初にお目にかかるな。私が、アムステルダムだ」
40代くらいの妙齢の男。
黒いマントを羽織り、全身を黒いスーツに身を包んだその男―――アムステルダム本人が、俺達の前に立っていた。
「予定ではまだこの場所へは来ぬことになっていたのだがな……案外貴様らは素早かったな」
「アムステルダム……コイツが、この世界……島を滅ぼそうとしている元凶」
「元凶?……ふむ、それは少し筋違いというものだな。まぁ、滅ぼすという点では否定せぬがな」
元凶ではない?
けど、コイツは確かに、この世界を破滅に向かわせようとしている。
なのに、元凶はコイツではないという。
それは一体……。
「まずは聞かせてもらおう。この世界を壊して、どうするつもりだ!!」
瞬一が、アムステルダムにそう尋ねる。
するとアムステルダムは、マントを翻した後に窯の近くまで歩み寄り、そして。
「この世界の……数多ある世界の終幕だ」




