襲撃
「崩落の翡翠……ワス?」
麻美が何を言ってるのかどうかよく分からない。
もしかしたら、麻美の世界にいた何かなのかもしれない。
しかし……麻美もここまで狂暴なやつと対峙したことのある麻美に、少し同情を抱く。
「そうだなぁ!あんときあのガキにぶち殺された、あのワス様だ!!」
「うわぁ……さらりと恥ずかしいこと言ってやがるぞ、コイツ」
「黙って俺様の話を聞け!!」
「ヘイヘイ」
俺様とかいうやつ、俺苦手なんだよなぁ……。
さっさとコイツ倒して、上の階に行こう。
「というわけで……テメェの言い分は聞かねぇぞ。さっさとテメェブッ倒して上の階へ行くぞ!!」
直行の中で、何かのスイッチが入ったみたいだ。
だが、そんな直行の言葉が、直立不動の状態のままだった麻美の体を、動かしていた。
「触手相手なら……雷を帯びた我が剣よ、その姿を具現して我が武器となれ!」
俺は右手に刀を造る。
そして、迫りくる触手を、次々にぶった切る……!!
「喰らいな!!」
直行は、両手を上に挙げて、そこに巨大な水の塊を複製する。
その水の塊は、バラバラに散ったかと思うと、瞬時に凍りつき、ワスめがけて飛んでいく!!
「うをっと!なんだその芸当は!?……面白くなってきやがったぁ!!」
ワスはさらに狂気に包まれる。
同時に、触手の数が……増えた!?
「くそっ!斬ってるのに何でまた増えやがるんだ!!」
「ワスの宝具の力よ!ワスの宝具が生きている限り、触手は減らないわ!!」
触手に向かって銃を撃ち続ける麻美は、顔をこっちにも向けずにそう告げる。
……それにしても、乱発しているように見えて、しかし的確に触手を撃ち抜く麻美は。
やはり凄腕のガンマンなのだなと実感させられた。
「テメェらまとめて締め付けてやるよ!!」
「させない!これでも……喰らえ!!」
バン!
麻美の銃弾が、ワスの中心部に着弾する。
瞬間、さっきまで勢いがあった触手は、突然ぴたりと動きを止めた。
「ちっ……宝具を殺されたか。だが、テメェらにはそれぐらいのハンデが……」
「おせぇよ」
「なっ!?」
ズバッ!
いつの間にか後ろに回り込んでいた将吾が、ワスの体を一閃。
真っ二つに斬られたワスは、苦しみだす。
「ハァッ!」
そこに、麻美の銃弾が、ワスの体を襲う……!!
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
……的確に狙われたその銃弾は、ワスの心臓を確実にとらえていた。
そしてワスの体は、そのまま黒い塵と化して消え去ってしまった。
「……死ぬの速かったな、ワス」
割と死ぬのが速かったワスに追悼(?)の言葉を述べ、俺は得物をしまう。
「結構な腕前なんだな……」
「お前こそ、将吾。さすがは剣士ってところだな」
「どっちかっていうと、魔法剣士だけどな」
魔法……というか魔術も使えるのか。
将吾、恐るべし。
「さて、ワスもいなくなったことだし、三階か……アイツらと合流出来るかもな」
「……うん」
「どうした?麻美」
「う、ううん!なんでもないよ。さぁ、上に行こう!」
「……?」
麻美が微妙に焦っているのが目に見える。
それだけ、ワスという人物が目の前に現れたのが驚きだったのだろう。
しかし……元居た世界の悪役が現れることがあるのか。
……クリエイターとか現れないだろうな?
あ、アイツは死んでなかったか。
とにかく、謎を少しばかり残したが、俺達は上へ行くことにした。




