ちょっ……俺にそんな趣味はないから!
「ハァハァ……」
「ぜぇぜぇ……」
つ、疲れた……。
あれだけの敵を相手にしたんだ。
これじゃあ最終決戦迎える前に、俺達の体力が尽きてしまいそうだな。
「みんな、大丈夫?」
こんな状態でも、里美はみんなの心配をする。
「ああ……大丈夫だ」
「俺も無事だ」
「こんなの、準備運動にしかならねぇよ」
……直行。
お前、その体力をみんなに分けてやれよ。
ていうか、俺に分けてくれ。
「……さて、どんどん上に行くか」
「だな。早く先に進まないと、時間がなくなるからな」
しかし、影のほとんどが俺達の中の誰かしらの能力を模倣しているのは、どうしてだろうか?
……もしかしたら敵は、俺達がこの世界に来ていることを知っている?
「……情報が漏れているとは考えにくい。なら、相手は何かしらの方法で、俺達のことを監視してる?」
「おい、どうしたんだよ瞬一?」
そこに、不審に思ったらしい将吾が俺に尋ねてきた。
「ああ……妙だとは思わないか?」
「何がだ?」
「戦ってて感じなかったか……あの影、直行や俺、将吾に麻美。その他の人々の戦い方を模倣してるやつも混ざってたぞ」
「……私も薄々は感づいてた」
麻美も同じことを考えていたらしい。
けど、アムステルダムは、俺達がこの城に来ていることを知っているのだろうか……いや、考えるだけ愚問だろう。
何せ、分かってなければ、こんな敵出してこないもんな。
「……次はこの扉か」
「……RPGの世界に迷い込んだ感じだね」
「俺はリアルでRPGの世界から来たんだが……」
「……そう言えばそうだったっけか」
聞いた話によると、将吾はとあるRPGの世界に飛ばされているらしい。
それでこっちに飛ばされたんだから……踏んだり蹴ったりだな、本当に。
「何が起きるか分からないからな。気を付けなければならないな」
……なんとなく開けるのに戸惑いを感じるのは気のせいだろうか。
「……嫌な予感がする。なんというか、中に入ったら、また戦闘は避けられないような、そんな感じが」
「なら、それはアムステルダムがそこにいるというわけじゃないか?」
将吾がそんなことを言う。
……いや、そんな感覚じゃない。
もっと、何か別の脅威だ。
何となく……人じゃないものと対峙するような……。
例えるなら、魔物と対峙するような感覚だ。
「……行こう」
直行は、問答無用にその扉を開いた。
中は……暗いな。
明かりが欲しい。
この暗闇じゃあ、中がよく見えない。
「……気を付けろよ。何が起こるか分からないからな」
「……」
無言で頷く三人。
慎重に、だが素早く中に入る。
やがて、全員が部屋の中央部まで入った。
その時だった。
「……!?」
ゾクッ!
殺気が感じられる。
ただの殺気じゃない……狂気が入り交じった殺気だ―――!
それだけじゃない。
突如部屋の明かりが、すべてつけられた!
「うわっ!?」
「眩しい!!」
ちょ……目が痛いんですけど!?
こんな状態で攻撃なんて受けたら……!!
「!危ない!!」
「え?……うおっ!?」
将吾が俺に向かってそう叫ぶ声が聞こえる。
同時に、俺に迫ってくる、触手みたいのが見えた!!
「危ない危ない……からみつかれるところだったぜ」
「この触手……まさか!」
「麻美?」
麻美が触手に対して過剰に反応を示す。
……何か、因縁深いものでもあるのか?
「いやぁ、俺様の触手よけるたぁ、結構いい運動神経してんじゃん?ヒャハハハハ!!」
現れてきたのは、狂気に包まれた何者か。
コイツは……。
「こんな世界にまで現れてきたというの……『崩落の翡翠』ワス!!」




