貴重な情報
「それじゃあまず、兄さんの話を聞こうか」
……本当にコイツは何かを知ってるのか?
もしコイツが本当は何も知らなかったら?
逆に、コイツが知りすぎていたら……それは敵からの刺客という可能性すら出てくる。
……ここは賭け、か。
「んじゃあ、最近この世界で、変わったことはないか?」
「変わったこと……城が出来たことだな」
「城?城って……」
「そうだ。この島には、元々城なんてものは建てられていなかった。だが、ある日突然、二つの城が建てられたのだ」
二つの城?
一つは、間違いなくモテラスの城だよな。
そして、もうひとつが……。
「んじゃあ……アムステルダムってやつは、知ってるか?」
「アムステルダム?……知らないな」
やっぱりそこまでは知らないか……。
「その城、どこにあるか分かるか?」
「ああ。ひとつはあれだ」
そう言って、モテラスの城を指す。
「そしてもう一つが……あれだ」
「あれって……」
男が指さした先には……。
……あれ、何もない?
「何もないじゃないか」
「……ああ。何もないように見えるだろ。しかし、あの方向に進めば、もうひとつの城は確実に存在する。何しろ、俺が直接行って確認してきたくらいだからな」
「確認してきたって……アンタ、一体何者なんだよ?」
コイツの正体って、一体……。
「……ナイト・アスベルク。死にかけた俺のことを、この世界の誰かに救ってもらった存在だ」
「死にかけた?……本業何なんだよ、アンタ」
「……元々は、暗殺稼業をやっていてな」
「暗殺稼業……それでか。素顔を知られないように、サングラスと黒い帽子をかぶっていたのは」
て言うか、『死にかけた俺のことを、この世界の誰かに救ってもらった存在』って言ったな。
ということは、コイツも間違いなく、どこかしらで死にかけたということか。
つまり、俺と同じ。
死ぬ直前に、モテラス(かどうかは分からないが)に連れてきてもらった存在だということか。
「……聞きたいことはそれだけか?」
「……ああ」
「なら、対価は……この世界を、救ってくれ」
「え?」
それが、ナイトからの要求か?
……いやいや、なんか俺達に課せられた物の方がでかくない?
「ここ最近、影の者達による住民の襲撃事件なんかも流行ってきている。その影の出所もまた……あの城というわけだ」
「影……!!」
そうだ。
影と言えば、俺がここに来た時に真っ先に襲われたではないか!
あの影が、この世界の住人も襲っているというのか?
「……そうだ。そして、俺も何回か襲われたことがある。最も、こっちには武器もあるし、大したことはないのだが、街を歩く住人は皆、丸腰だ。襲われたら対抗手段がない」
「まぁ、それこそ体術とか学んでる人は大丈夫だろうけど、そうじゃない人っていうのは……」
……被害者がすでに出ていたなんて。
許せないぜ……アムステルダム!
「じゃあな。それじゃあ、俺はここで失礼させてもらう」
「……アンタは、この世界でどんな役回りをしてるんだ?最後にこれだけは、聞かせてくれ」
「……影を狩る者だ。役割を終えたとしても、元の世界に戻るつもりのない、ただの狩人だ」
「……ありがとな!!」
俺はナイトに別れを告げ、急いでモテラスが待つ城へと向かった。
途中で、モテラスからもらった通信機もどきを使用して、みんなに連絡を取りながら。




