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Magicians Circle  作者: ransu521
サマラ編
134/309

徒労

さて、俺は今、一人でこの世界を歩いているわけだが。

一応この世界にも住人はいるらしく、歩けば何人かの人に会うことが出来た。

流石に現地の人に、


「すみません。アムステルダムの住む城は何処ですか?」


なんて聞くわけにもいかない……というか、聞いても意味がないことをついさっき悟ったばかりだ。

何故なら、何も考えずに、近くにいた住人Aにそう尋ねてみたところ、


「え?アムステルダム?アダムとイヴの間違いじゃないのかい?」


なんて切り返しをされたからだ。

……M―1で言うところの予選落ち並なボケだったぞ(しかもわざとボケたわけではなく、真剣に分からなかったそうだ)。

つまり、少なくともこの世界の住人達は、アムステルダムの存在を感知していないということになる。

これは恐らく……。


「アムステルダムが、外部の世界からやってきた人間という可能性もあるな」


外部から来た人間だから、この世界の人間達はその存在を知らない。

つまり、逆に考えてみれば、何か変化があったとしたら、それはつまりアムステルダムに繋がる可能性もあるというわけだ。


「成る程……なら、アムステルダムのことについて聞く必要はないな」


俺はとりあえず、『最近何か変わったことはないか』という部分から責めていくことにした。

そして、次に述べる文が、その結果である。

住人B。


「いやぁ~特になかったと思うけどね……ところでアンタ、モデルになってみない?」

「いえ、結構です」


住人C。


「ワシは何も知らんとよ。変わったことと言えば、ワシはアンタのこと見たことねぇだよ」

「まぁ……俺はこの世界の住人じゃないからな」

「へぇ~世の中には不思議なこともあるさね」


住人D。


「最近変わったこと?私に聞かれてもそんなこと知らないわよ。それに何アンタ?見たこともないような服装して、一人でいる私に話しかけるなんて……もしかしてナンパ?」

「誰がテメェみたいなガングロ相手にナンパなんかするか」


住人E。


「変わったことね……そう言えば最近」

「何かあるのか!?」

「……近所の娘さんが、元気な赤ちゃん生んだとか」

「おめでた話を聞きにきたわけじゃありませんから」


結果。

何の情報も集まりませんでした。

十分で四人に聞いてみたが、どいつもこいつも使えない情報ばかり。

なんで俺がモデルにならなきゃならないんだよ。

それに俺は、ナンパなんかしにきてねぇし、赤ちゃん出来たなんて話を聞きにきたわけでもないから。

ったく、マイペースな住人だな、本当に。


「……このままじゃ埒が明かないぞ」


て言うか、本当に日が暮れてしまいそうで恐いな。

……マジでなんとかしないとな。


「……兄さん」

「……ん?」


その時。

後ろから誰かに話しかけられた。

誰だろうと思い、後ろを振り向いてみると、


「……誰だ?アンタ」


およそ怪しい格好をした男が、そこに立っていた。

その人物は、季節に似合わない黒いコートを羽織り、全身を黒いスーツで隠し、サングラスをつけていて、頭には黒い帽子を被っていた。

サングラスと帽子のせいで、素顔がまったく判別出来ないでいた。


「安心しな。怪しい者じゃねえから」


……無茶苦茶怪しいんですけど。

怪しくないっていうのなら、せめてそのサングラスを外しやがれ。


「……お前らにとっていい情報を与えてやろう」

「!!本当か?」

「ああ……ただし、それなりに対価となるものは要求するやもしれぬがな」

「……分かった。話に乗ろう」


俺はその男の後について。

路地裏に行くこととなった。
















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