後ろの正面だぁれ?
「アンタも……他の世界から引き抜かれた口か?」
俺は、村上にそう尋ねる。
すると、
「そうだよ。瞬一よりは少し早いくらいかな」
「俺より早いくらいか……どこに落とされた?」
「落とされた?」
……何だか村上が冴えない顔をしているな。
まさかとは思うけど……。
「お前は、落とされたりしなかったのか?」
「うん。気付いたら、この場所に立ってたんだけど……」
アイツ……男だからと言って俺に適当な扱いをしやがったな?
ふざけやがって……。
「ど、どうしたの?少し恐い顔してるけど……」
「え?こんなに笑っているじゃないかぁ(ニヤリ)」
「その笑顔が恐いよ……」
そうかな?
こんなに笑顔なのにな(ニヤリ)。
……まぁ、ふざけるのはこの程度にしとくか。
「何をふざけているのだ?お主」
「……え?今、どこから声が」
なんか、突然厳つい男の声が聞こえてきたような気がしたんだが……。
けど、ここには俺と村上の二人しかいないはず。
一体、どこから……。
「あ~今の声、気になる?」
「ああ……てか、知ってるのか?」
「知ってるも何も……」
そう言って、村上は右手を差し出して来た。
……ん?指輪をはめていること以外に何か変わった点が見られるわけでもない気がするんだけど……。
「指輪が……どうかしたのか?」
「まだ分からぬというのか」
「うわっ!?またか……って、まさか?」
この指輪から声が発せられてるって言うのか?
「その通りだ。我の名は……真名はいらぬな。ガンダーラと言う」
「ガンダーラって……アンタは何でそんな姿になってるんだ?」
「……マミに力を与えるため、と言っておこう」
村上の世界では、一体どんなことが起きているというのだろうか?
う~む、いまいちよく分からないな。
「んで、村上とガンダーラは、どんなことをしてるんだ?」
「え?」
物凄くキョトンとされた。
……俺、何か変なこと言ったか?
「……あ、ごめん。まさかいきなりそんな質問をされるとは思ってなかったから、少しキョトンとしてしまっただけです」
「ああ……済まないな。城まで向かってる途中までどうせ暇なんだから、お互いの話でもしようかなって思っただけだ。気にしなくていい」
「あ、そういうことだったんだ」
どうやら俺の説明で納得してくれたらしい。
そういうわけで、俺達は互いについて話し始めようとした。
そのタイミングで、ガンダーラが口出しをする。
「貴様ら……随分と余裕だな」
「何がだ?」
ガンダーラの言っている意味が分からなくて、俺はついそう答えてしまった。
そんな俺に、ガンダーラは言う。
「さっきみたいに、突然の奇襲があるかもしれぬのだぞ?戦闘の準備はしなくてよいのか?」
「大丈夫だろ。そう次から次へと敵が襲ってくるはずが……」
俺が言葉を言い終えるその前に。
「……おい」
「「!!」」
俺達は、何者かに声をかけられた。
まさか……敵か?
「だから言ったではないか。準備しておけと」
今の俺達は、丸腰状態だ。
ということは、攻撃を受けた時点で……俺達の敗北は決定する。
「流石にそれだけは避けたいな……」
どうする?
こういう時は……どうすればいいんだ!?
「……な~んてな♪」
「「「……え?」」」
流石にこの言葉には、ガンダーラすらも驚いていた。
『な~んてな♪』ってなんだよ。
何がしたいんだよ、コイツはよ……。
「今そっちに姿現すから、ちょっと待っててくれ」
男の声だな……俺達と同年代くらいか?
そしてその男は、宣言通りに俺達の前に姿を現した。




