何だ?それに、誰だ?
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ドスン!
どうやら俺は、どこかに落とされたみたいだ。
……しかし、痛いのなんの!
「あの野郎……姿が見えないことをいいことに、俺をこんな所につき落としやがって……城についたら覚悟しておけよ」
しかし、この世界に来て思うことと言えば……。
「何というか、世界観が統一されていないような気がするんだよな……」
ここは、本当に俺が住んでた世界と隣り合わせの世界なのだろうか?
目の前に建つのがビルなくせして、その横には……蔵造りの建物が建っている。
何というか、時代背景とか世界観とかが無視されてないか、ここ。
「そうか、それがサマラって世界の特徴……」
確かアイツは、サマラは世界と世界を結ぶ世界って言ってたな。
……ようは、いろんな世界に行く上での中間地点って考えればいいのか?
「……はぁ」
なんか自然にため息が出てきた。
これからこの世界で、結構長い日々を送る羽目になるのか……。
……みんな無事にしてるかねぇ。
特に気になるのは……一之瀬兄妹だ。
あの後兄の方は、本当に“悪魔”から解放されたのか?
それに、一之瀬は……自分に責任とか感じてたりしてないかね?
後は、葵達が俺のことを心配してるかもしれないな……突然いなくなったりしたから。
ものすごく不本意ながら、俺はこんな世界に来てる。
「こっちの用が済んだら、すぐにお前らの所に帰るから……謝罪はその時でもいいか?」
もちろん、俺の呟きに返す者はいない。
俺の声は、空へと消えていく。
「……感傷的になっても仕方ない。さっさと城に向かうとすっか……まぁ、途中で誰かに合流出来たら尚いいけどな」
と、俺はこの世界における第一歩を踏み出そうとした。
その時だった。
ゾクリ!
「!!」
な、何だこの気配は……。
明らか俺に対して、殺気を醸し出していやがる。
出所は……後ろか。
「……」
俺は、ゆっくりと後ろを振り向く。
慎重に、なおかつ迅速に。
そして、完全に後ろを向き切った時に。
「……え?」
俺は、全身真っ黒の男の姿を確認した。
「……影?」
およそ人間の形をしている『それ』は、しかし意識がないようにも思えた。
何というか……前にクリエイターが使用してきた人形みたいだ。
「つまりコイツは、誰かが操っている影ってことか……」
「……」
言葉は発しない。
それだけに、恐怖感を植え付けるには十分なものだった。
「……こういう場合は、どうするべきだ?」
死んだふりか?
いやいや、コイツ熊じゃないし、熊だったとしても、喰われて死ぬから。
友好関係築くか?
……無理だな、コイツ喋らないし。
というわけで……。
「全速力で逃げる!!」
左足で地面を勢いよく蹴り、俺は全速力でその場からの脱出を試みる。
だが。
ヒュン!
「……え?」
一瞬、俺の横で風を斬る音がしたかと思うと、俺の目の前に、その影はいた。
「って、速っ!?」
なんてスピードだ……ってか、ほとんど瞬間移動していなかったか?
何というか……俺がまともにやって太刀打ちできる相手ではない。
逃げるにしたって、コイツの足はものすごく速い。
つまり……俺はこの世界に来て早々、詰んだ?
「……いやいや、さすがにそれはないだろう。何か方法があるはずだ。何か……」
敵を目の前にして棒立ちになるのもどうかと思ったが。
目の前の敵を倒す方法を真剣に考えなければならない。
このスピードだと、正面から攻撃してしまえば、すぐに避けられてしまうだろう。
……どうする、どうする俺!?
と、悩んでいたその時だった。
「ハァッ!」
「!?」
パン!という短い銃声が響く。
その銃弾は、目の前の影を、間違いなく射抜いた。
途端に、その影はあとかたもなく姿を消していった。
……今の銃声は誰の物なんだ?
「……助けてくれてありがとう!……んで、お前、誰なんだ?」
俺は遠くに居るだろう人物に向かってそう叫ぶ。
すると、その人物は遠くから俺の方に向かって歩いてきた。
短くて黒い髪。
パッチリとした黒い瞳。
性別は……女だな。
背は小さめで……色違いの葵って表現も、あながち間違ってねぇだろうな。
「私の名前は村上麻美……あなたは?」
「俺の名前は三矢谷瞬一だ。よろしくな」
そう自己紹介すると、俺と村上は、右手で握手をした。
まずは一人目ってところ。
まだまだキャラは登場しますよ。




